22歳の誕生日、自分への決意とポケモン図鑑No.

いつも以上にメルヘンな文章に自然となるので夕方超こわい。

「少し寄り道をしよう。」
目的地に向かう途中、丘に登った。
夕方だった。
雲は薄ぎれの布が折り重なったように広がっていて太陽はその姿を見せていない。
でももう日が暮れることは葡萄酒のようになりつつある雲の色を見れば瞭然だった。
予想通りに山が見えた。道の状態が悪い。

そもそもこの道や方向は朝の予定にはない。

知っているチェーン店に行こうとしたらいつものお店より近い場所にあるという。
ならばと自転車を転がした。
知っている場所にでた。
道は思わぬところで繋がっているものである。

ああ、この辺で父、右左折禁止を見落として。
父の車の前を走行していたパトカーから呼び止められて、おまわりさんから笑顔で違反切符を切られていたな。

笑ってやろうと思って、寄り道をしに丘に登ったんだ。登ったことはないが、よく知っている山が見える。
「あの山に雪が積もったね。」
「もうすぐ下に降りてくるよ。」
このやり取りを母の実家で祖母と話していたのをふと思い出した。
「あの山に雪がまだ積もらないね。」
「いつ積もるかな。」
同じやり取りが何度も頭の中でリプレイされる。このやり取りを、私は育ていてもらう間、毎年やっていた。
祖母はこの山の威容をよく褒めた。古い言葉や話を私に聞かせた。今は亡き祖父もそれを黙ってそれを聞いていた。

日が暮れてきた。きっと年季が入った葡萄酒ってこんな色なんだろうな、という色に雲が染まりはじめる。

この山に暮れる日を見るとき、「帰ってきたのだ」とよく思う。
小さな頃、遠くにこして、みんな子どもなものだから言葉遣いや故郷を馬鹿にされた。
故郷は私にとって恐怖と痛みを伴うものになった。心を閉ざした。
帰郷してからは徹底的に言葉を綺麗にした。
育てたのは祖父母だった。

私は誰の病気も理解できなかった。

学校も合わず、態度が酷かったと思う。
祖父は最終的には怒り暴れる認知症、祖母はそれを受けてようつ状態だったし、よく忘れたことを咎める私を嘆いていた。

でも、今思い出すのはあの山に積もる雪の話をしていた自分たちなのだ。
随分と都合がいいと思う。
でもこんなにも私の心に住んでいる人たちなのだ。まだ新しい人が入れない。
祖父も父ももういないのに。あんな最期を迎えて。
私はわあわあ泣きながら、帰ってしまった。

歳とったようです