夜じゃなくてもお化けはいるか七夕坂夢幻能聴きました。

連載小説です。1話から読んでいだだけると嬉しいです。

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『秋のカブトムシ』　第4話

晴子の部屋に入った明人は、早々に鞄から黒いビニール袋を取り出した。

『この中に、貴方の彼女が入っています』

ラベルの文字を見て、袋を裏返す。
裏には何の記載も無い。

「先輩、ごめんなさいっ！」
思い切って袋を開けた。
しかし、中から出てきたものを見て、明人は一人で声を出して笑ってしまった。

中からは、膨らむ前のシワシワの浮き輪のような物が出てきた。全てが肌色の。

「これは……、やっぱり『大人の人形』というやつかな？」

明人はあきれたようにぺたんこの物体を見ていたが、同封されていた説明書らしきものに気がついて、手に取った。

『　貴方の彼女　取扱説明書

1・まずは彼女を膨らませましょう。
　道具は使わず、必ず貴方の息で最後まで膨らませて下さい。
　守らない場合、貴方の彼女にならずに危害を加える可能性があります。

2・彼女たちには、それぞれ異なるストーリーがあります。
　貴方の彼女は、以下のストーリーを持っています。

　はじめまして！　私の名前は夏希（なつき）。23歳。特技はピアノ。
　1年間働いた会社は、セクハラだらけのひどいブラック企業だった。新人研修会とか言って、上司の部屋に泊まらされるの。
　彼氏に相談したんだけど、実は彼氏には多額の借金があって、返却するために私を連帯保証人にして、闇金からさらにお金を借りると言い出した。
　両親は私が中学生の時に失踪して、今や私は天涯孤独。
　もう、どうしていいのか分からない。
　私はビルの屋上から飛び降りて、楽になる事を選んだ。
　……その屋上へ、たまたま貴方が現れた。
　貴方は私に言った。
　「人生は長い！　まだやり直せる！」
　私は貴方のその言葉で、飛び降りるのを止めた。
　そして、貴方の部屋にやって来た。
　でも部屋に着いたとたん、張り詰めた糸が切れたように寝てしまったの……。

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「……なんだコレは！？」
明人は、まだ文字が続く説明書を思わず放り投げた。
「そういう人形にしては、設定が不幸すぎるのでは……？」