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スシLOW

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身の程の丈
(個人的に気に入っているので転載)

 人の噂も七十五日、何故だか、鼻の奥がむず痒く、沸き立つ粘液を伴って、くしゃみが頻発。悪い噂に身震いしながら、気がつくと、箱入りティッシュが底を突く。軽い痛みを伴い、鼻は赤みを帯びつつ、クリスマスもまだ先の時分、気の早い奴だと、揶揄する声が聞こえて来そうで、深夜、鼻セレブが欲しいと思い立つ。コートを羽織り、草履を引っ掛け、外に出る。冷たい空気が一面に佇み、キラキラと路面は光を反射して、雨が降っていた事を教えてくれた。まだ降りそうな気配もあったのだが、そのまま傘を持たずに戸を閉め、足を進める。深夜の刻であるから、車通りも少なく、人影も無い。二つばかり持ち出した、蜜柑の片方を頬張りながら、二四時間営業の薬局へ向かう。

 その季節の冷たさ、吹く風に、身を強張らせれば、歩く速度は自然と早くなる。幾つもの信号機を通り過ぎ、薬局に到着する頃には、巻いたマフラーの下が汗ばんでいた。手で汗を拭いながら、鼻セレブを探すものの、その薬局での取り扱いは無かった。代用となる保湿ティッシュを一つ手に取り、目に付いた、四連の美味しそうなパンも一緒に会計を済ます。煌々と光る薬局を背に、このまま目的を果たさず、帰るのはどうも忍びないと、距離はあるものの、何軒かのコンビニエンスストアに立ち寄れば、一つくらいは手に入るのではと、期待する。残った蜜柑をポケットより取り出し、口に頬張り、英気を養う。

 帰りの道中、幾つかの店舗に寄り付けたものの、鼻セレブとの遭遇は、果たされる事なく、全ての店舗において、取り扱い無しという結果に終わる。最後の店を後にする頃には、拭った時よりも、大量の汗をかいていたが、それ以上に、途中で降り出した大粒の雨の方が酷く、汗をそのままに置き、家路を急いだ。家に着くと早々に、濡れた衣類のまま、購入した保湿ティッシュで鼻をかみ、黙々とパンを頬張る。そんな深夜の刻、自室であぐらをかいていると、自身というのは、なんとも、セレブとは程遠い存在なのかという、観念が生まれる。

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コメント

ニニィ

ニニィ

1 GRAVITY

私も、名前からして遠い存在です…[大泣き]

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スシLOW
スシLOW
原宿でショッピングバッグをいくつも持って歩いてたら、知り合いにセレブみたいだって言われた事ある!! でも、昔の話。
1 GRAVITY
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ちなせ

ちなせ

1 GRAVITY

本当文章を書くのがお上手!

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スシLOW
スシLOW
褒められた!やったぜ。
1 GRAVITY
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