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たいち
「それでも、あの日」
父が「家にいたい」と言ったとき、
私は、うなずくことができなかった。
苦しそうに息をする父を見るのがつらかった。
夜中、痛みで目を覚ましている父を見るのも、
その横で何もできずに座っている母を見るのも、
全部が、胸に刺さるようだった。
「入院した方が、楽なんじゃない?」
誰に向けた言葉だったのか、今でも分からない。
父か、母か、それとも自分か。
訪問看護師さんに電話をした夜、
私は泣きながら同じことを何度も言った。
答えが欲しかったわけじゃない。
「大丈夫」と言ってほしかっただけなのだと思う。
年末、先生が来ると聞いた日。
家には、自然と人が集まっていた。
子どもたちの声がして、
普段は静かな家が、少しだけにぎやかだった。
父のベッドのそばで、
孫やひ孫が手を握っているのを見て、
私は、少し後ろに下がった。
近づくのが、怖かった。
ここにいることが、
父の「家で最期を」という願いを
壊してしまう気がしたから。
先生が来て、
父が「良かった」と笑ったとき、
私は初めて気づいた。
父は、苦しいだけじゃなかった。
ここにいることを、
ちゃんと「選んで」いたのだと。
「痛みは何とかします」
先生のその言葉を聞いて、
胸の奥で固まっていた何かが、
少しだけ溶けた。
父は、眠った。
母は、何度も「ありがとう」と言った。
その夜、
私は父の部屋の隅で、
ただ座っていた。
何をすればいいか分からなかったけれど、
離れることだけは、できなかった。
日が暮れて、
父の呼吸が、静かに、浅くなっていった。
誰かが手を握り、
誰かが名前を呼び、
私は、ただ見ていた。
最期の瞬間、
父の顔は、思っていたより穏やかだった。
そのとき、
「入院させた方がよかったのではないか」
という考えが、
すっと消えたわけではない。
でも、
「ここにいてよかった」
という気持ちが、
それよりも少しだけ強かった。
父を見送ったあと、
母が言った。
「お父さん、家でいられて幸せだったと思う」
私は、うなずいた。
やっと、ちゃんと。
後悔がゼロになることは、きっとない。
でも、あの日の選択が
間違いだったとも、もう思わない。
あの日、私は
「正しい娘」ではなかったかもしれない。
それでも、
父のそばにいた娘では、いられた。
それでいいのだと、
今は、思っている。
コメント
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たちつて

すい
東京在住の19歳(05の代)です。
普段は大学に通っています🙌🏻
動物が好きで特に猫が大好きです!
趣味はkpopの音楽を聴くことで、txtというグループを推していますめ
好きな食べ物は焼き鳥やパスタなどのイタリアン料理が好きです!あとラーメンも!
嫌いな食べ物がほとんどなく食べることが好きなのでおすすめのお店があったらぜひ一緒に行きたいです。
映画やアニメも見ることが好きで、色んなジャンルを見ます!
初めたばっかりですが、ぜひ色んな方とお話ししたいです!仲良くなったら電話もしたいです。
よろしくお願いします!

はむち𓃠
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metro
「彼女募集」って名前の部屋に入る女ってまともだと思うか?
そしてそれすらもわからない自己客観視力がない男と付き合いたいか?
まさに地獄の一丁目である。予後悪いとかいうレベルではない。

たくあん
そしたら言葉で謝れないから エモートで「ごめん」って言ってきた。
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相手の部屋に爆弾あると思った
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たいち 投稿者
なんだろう、なんでAIにこれが書けるのだろう。自分達の体験がこうも生々しい描写として再現されると、そら恐ろしい感じになる。すごいね。