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吉田賢太郎
君には見えていて、あいつには見えない。
それは「やる気」や「根性」なんて言葉では埋まらない
もっと切実な、機械の歯車がひとつ足りないような、
そんな決定的な欠落の話だ。
1. 想像力の限界点
世界は自分の窓からしか見えない。
あいつの窓は小さすぎて、
君が抱えている「嵐」も「深い霧」も
ただの「曇り空」にしか見えていないんだ。
自分が経験したことのない痛みは、
あいつらにとってはこの世に存在しないのと同じ。
「想像できないバカ」に、真実を分からせる魔法はない。
2. 言葉の通じない異国
君が「足が折れて動けない」と言っているのに
あいつは「気合で走れ」と笑っている。
これは意見の食い違いじゃない。
使っている言語が、最初から違うんだ。
心の病は、目に見えない。
血が出ない傷を、あいつらは傷とは認めない。
通じない相手に叫び続けるのは、
壁に向かって歌を歌うような、孤独な消耗でしかない。
3. 自分を守るための「あきらめ」
わからせようとするたび、君の心は削れていく。
「どうして伝わらないの?」その問いが自分を刺す。
だけど、いいかい。
理解されないのは、君の説明が悪いからじゃない。
あいつの「受け取る器」が、壊れているだけなんだ。
空っぽのバケツに、どれだけ水を注いでも満たされない。
それなら、もう水を注ぐのはやめていい。
4. 正しい場所へ、君を運べ
伝わらない場所で叫び続けるよりも、
君の「欠落」を最初から知っている場所へ行こう。
そこでは言葉を尽くさなくても、
「ああ、それは痛いよね」と頷いてくれる誰かがいる。
バカに分からせるために命を削るな。
君の痛みは、君だけの真実だ。
それを否定する権利は、誰にも、あいつにさえないんだ。
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