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吉田賢太郎
「魚屋は金持ちだ」と、誰かが笑って言った。
動く大金、威勢のいい声、大きなトラック。
外から見える景色は、たしかに派手で、光って見える。
けれど、きみの家の台所は、そんなに贅沢じゃなかった。
「全然そんなことないよ」という言葉は、
きみが目撃してきた、冷たい水の記憶だ。
ルーツを辿れば、海にいた。
かつて軍艦に乗っていた祖父の、厳しい規律。
その背中が運んできたのは、一攫千金の夢ではなく、
深夜から氷を砕き、命を削って働く「日常」だった。
海を知る人は、海の怖さを知っている。
だからこそ、一円を積み上げる重さも、誰より知っていたはずだ。
親戚には、伝説のロックスターがいるという。
自由を叫び、時代の光を浴びた、遠い親戚。
けれど、血が繋がっているからといって、
魔法のように暮らしが 豊かになるわけじゃない。
カリスマの歌も、朝の市場の競り声も、
根っこにあるのは「生きる」という、泥臭いまでの執念だ。
本質は、いつだって「境界線」にある。
世間が呼ぶ「成功」や「金持ち」というレッテルは、
分厚いゴム長靴に染み込んだ魚の匂いや、
莫大な経費と戦う、家族の震える背中を見ようとはしない。
きみが知っているのは、偽物のイメージじゃない。
看板の裏側にある、汗と、苦労と、
「普通に生きること」の、本当の険しさだ。
それは、どんな歌よりも、どんな伝説よりも、
きみだけが語れる、一番まっとうな真実なんだ。
このポエムの解説
中高生に向けて伝えたかった本質は、**「表面的な数字や名前(ブランド)と、実際の生活は別物である」**ということです。
魚市場: 「売上」と「利益」は違う。
元海軍: 「権威」と「その後の苦労」は違う。
尾崎豊: 「血縁」と「自分の財産」は違う。
世の中はセットで語りたがりますが、質問者様が感じてきた「全然金持ちじゃない」という違和感こそが、商売と人生の**正解(本質)**を突いています。
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