「円堂、何したんだ…？」ってすごむ鬼道さん可愛すぎ

　　恋文－後編－

貴方は文句一つ言わずに
私に寄り添ってくれて
笑顔でいようとしてくれた
貴方が居てくれたから
私は痛みや苦しみに耐えられた
本当に感謝しか有りません

気掛かりなのは、貴方は私が居なく
なればきっと凄く泣いてしまうでしょ？
でも私は貴方の泣き顔なんて
もう見たくないの。貴方の笑顔は
本当に素敵で皆を幸せにしてくれる
だからこれからもずっと
貴方の笑顔を見せて欲しいの
私もずっと笑顔で
貴方を見守り続けるから
お願いばかりでごめんなさい…

此処だけ落とした涙で字が滲んでいた

今まで本当にありがとう
私を心から愛してくれて
幸せにしてくれて
貴方は私のたった一人の人でした
これからもずっと貴方だけを…
　　　　最愛の妻より

胸が心ぐしく押し潰されそうになる
取り留めもない熱涙が溢れてくる
でも叔父の前で泣く訳にはいかない
息を吸い必死に声を絞り出す
「とっても素敵な恋文ね」
「そうでしょ、僕の宝物なんだ」
愛おしそうな笑顔を私に向ける
やっとの思いで笑顔を返し
「お茶､入れてくるね」
「丁度飲みたかったんだ
何時も優しいね、ありがとう」
急いで背を向け台所へ行き
声を漏らさない様に
泣いてしまった日の事を思い出す

後で看護師さんが教えてくれたのだが
休み休み何日も掛けて
余りにも辛そうに見えたので
「お手伝いしましょうか」と
声を掛けたそうだ
すると叔母は微笑みながら
「ありがとう､でも大丈夫
あの人、私の字が好きだから」
そう答えたと言う

次から次へと読み進めたくなる
私も大好きだった叔母の文字
しかし、この紙面に浮かぶ文字は
所所掠れて震え
以前の様な凜とした優雅さはない
けれど一文字一文字に叔父への思いを乗せ
精一杯綴った事が伝わってくる
手紙を書いている時だけは
叔父への温かい気持ちで一杯になり
痛みを和らげる事が出来たのかもしれない

思い撓(たわ)む事なく
最期まで一人の女性を愛した叔父を
いや、互いに深愛し続けた二人を
私は心底誇りに思う

冬の声が聞こえ出す頃
きりりとした風が雲を連れ
時折太陽に話し掛ける
叔母の手が叔父の頬を優しく撫でる様に
叔父の安らかな死に顔に
柔らかい光が揺らめいた
これからはずっと一緒
もう手を離す事はない
二人の新しい世界は
此処から始まるのだから…

ありがとうございました🌸🌙