『かみの国のコレクター』｜アクア−Devilの投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

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アクア−Devil

2025/10/26

『かみの国のコレクター』

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むかしむかし、山あいの町に「ハルト」という少年が住んでいました。
ハルトは、どんな新しいものよりも、**“紙”**が大好きでした。

ノートの手ざわり。
本のページをめくる音。
封筒の匂い。
インクがにじんだ跡までも、ハルトには宝石のように見えました。

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町のみんなは言いました。
「今の時代、なんでもデジタルさ。ボタンひとつで本も読めるし、手紙だって送れる。」

でもハルトは首をふりました。
「でも、紙には“ぬくもり”があるんだ。ページをめくるたびに、心が動くんだ。」

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ある日、古い本屋の奥で、ハルトは一冊の分厚い絵本を見つけました。
表紙には金色の文字でこう書かれています。

『かみの国への地図』

ページをめくると、ふんわりと紙の香りが立ちのぼり、
次の瞬間、ハルトの体はふわりと光に包まれました。

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目を開けると、そこは──まぶしいほど白い世界。
空も地面も紙でできていて、木々の葉は本のページ、
川の流れはインクでできていました。

「ようこそ、紙の国へ。」

声のする方を見ると、紙の羽を持った少女が立っていました。
名前は「リーフ」。この国の案内人です。

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リーフはハルトを、紙の国の宝物庫へ案内しました。

そこには、**世界中の“紙の記憶”**が集められていました。
最初のラブレター。
子どもが描いた落書き。
詩人の書きかけの詩。
すべてが時を越え、紙に宿って光っていました。

リーフは言いました。
「あなたの世界では、便利さのかわりに“記憶の手ざわり”が失われつつあるの。
でも、紙はね、人の心の温度を閉じこめてくれるの。」

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ハルトはそっと古い日記を手に取りました。
ページを開くと、知らない誰かの文字が並んでいました。
“今日の夕焼けはとてもきれいだった。明日もきっといい日になる。”

たったそれだけの言葉なのに、
その人の息づかいが聞こえてくるようでした。

「……紙って、生きてるんだね。」
ハルトがつぶやくと、リーフはうれしそうに笑いました。

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しかしその時、紙の国に黒い影が忍び寄ります。
“デジタルの嵐”と呼ばれる巨大な風。
あらゆる紙をデータに変えて、吸いこんでしまう魔の風です。

リーフは震えながら言いました。
「このままじゃ、紙の記憶が消えてしまう……！」

ハルトは胸のポケットから、一枚の紙を取り出しました。
それは、自分の母がくれた古い手紙でした。
「どんなときも、自分の好きなものを信じなさい。」

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ハルトはその手紙を空に掲げました。
インクの文字が光り出し、紙の国じゅうにやさしい風が広がります。

「紙は消えない！　だって、心がこもってるんだ！」

その声に呼応して、地面の本、ページの葉、インクの川が輝き、
嵐は次第に小さくなっていきました。

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静寂が戻ると、リーフは微笑みました。
「あなたは紙の心を守ってくれた。ありがとう。」

「ぼく、コレクションを続けるよ。
紙はただの物じゃない。思い出の“かたち”なんだ。」

リーフは頷き、手のひらに一枚の白紙を置きました。
「この紙は、あなたの想いを書き記すための紙。
それがあなたの“物語のはじまり”になるわ。」

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気づくと、ハルトは古本屋の中に立っていました。
手の中には、真っ白な一枚の紙。
それは、確かに温かく、心臓の鼓動のようにかすかに震えていました。

ハルトはその紙を、ていねいに箱に入れてコレクション棚へ飾りました。
デジタルでは見えない、“思いの証”として。

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それからというもの、ハルトは紙の魅力を集め続けました。
ただ集めるだけでなく、書き、描き、贈り、心を込めて残す。
彼の部屋は、やがて“紙の記憶”であふれる小さな図書館のようになりました。

誰かが言いました。
「どうしてそんなに紙にこだわるの？」

ハルトは微笑みながら答えました。
「だって、紙には“時間”が宿るんだ。
インクのにじみも、折り目も、全部その人の生きた証なんだよ。」

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そうして、紙の国と現実の世界は、静かに重なり合いました。
新しいものと古いものが共に息づく場所。
それが、ハルトのつくった“コレクションの森”でした。

風が吹くたび、ページがふわりとめくれ、
紙のささやきが、どこからともなく聞こえてきます。

「ありがとう。今日も、物語を残してくれて。」

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🌿 おしまい。