『運命のカードたち』｜アクア−Devilの投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

投稿

アクア−Devil

2025/10/18

『運命のカードたち』
―――――――――――――――――――――――――

夜の帳（とばり）が降りるころ、
町の片すみにある古びた倉庫の灯りがひとつ、ぽつんとともります。

そこに集まるのは、少年たち。
けれど彼らはただの子どもではありません。

「ふふ……もう俺たちに言葉は意味を持たない」
リーダーのカイが低く笑います。
「俺たちに代わって運命を決めるのは――カードのみだ」

テーブルの上には、一組の不思議なカード。
星の模様が刻まれ、触れるたびに光が揺れる。
その名も、“運命のデッキ”。

―――――――――――――――――――――――――

このカードは、ただのゲームではありません。
引いた一枚が、その夜の出来事を決めるのです。

「ルールは簡単。引いたカードの運命から逃げることはできない」

カイの言葉に、仲間たちは黙ってうなずきました。
言葉ではなく、心で合図を送りあう。

空気が張りつめる中、最初にカードを引いたのは少年ユウ。
彼の手に渡ったカードには――「嵐」の絵。

その瞬間、倉庫の外で雷がとどろき、風が怒ったように唸りました。
ユウの髪がばさりと揺れる。
「……来たな」
「お前の運命は、試されてる」カイがつぶやく。

ユウは立ち上がり、倉庫の扉を開けました。
吹き荒れる風の中で、目を細めながら叫びます。
「俺は嵐を恐れない！　受けて立つ！」

すると、雷鳴は一瞬にして静まり、夜空が裂けるように星が現れました。
カードが淡く光り、ユウの胸の前でゆっくりと溶けていきます。

―――――――――――――――――――――――――

次にカードを引いたのは、少女レイナ。
彼女が引いたのは「鏡」のカード。

鏡のカードは、自分の心の中を映すと言われています。
レイナの前に現れた鏡の中には、泣いている自分の姿がありました。

「私、怖がってた……いつも誰かの後ろに隠れてた」
涙を流しながら、レイナは鏡に触れました。

その瞬間、鏡が光となり、彼女の胸にすっと吸いこまれます。
「これでいい。もう逃げない」

カイがゆっくりとうなずきました。
「カードは、真実を映す。嘘はつかない」

―――――――――――――――――――――――――

そして最後に、カイ自身がカードを引く番がきました。
仲間たちは息をのんで見つめます。

カイの指先が一枚のカードに触れた瞬間、
空気が震えました。

――カードに刻まれていたのは「終焉（しゅうえん）」の文字。

「運命の最後……か」
カイは静かに微笑みました。

「だが、終わりは次の始まりだ」

彼がそう言った途端、カードが真っ白に燃え上がり、
倉庫の壁に光の門が浮かび上がりました。

「行こう」
カイの声に、ユウもレイナも立ち上がります。
彼らはその光の中へと歩み出しました。

―――――――――――――――――――――――――

次の朝、倉庫には誰の姿もありませんでした。
ただ、一枚のカードが机の上に残されていました。

それにはこう書かれていました。

> 『運命を決めるのは、
言葉ではなく――心の覚悟。』

そして、風がそのカードをさらい、
朝日に溶けるように空の彼方へと消えていきました。

―――――――――――――――――――――――――

世界のどこかで、また誰かが“運命のデッキ”を見つけるかもしれません。
そのとき、新しい物語が始まるでしょう。

カードが導くのは、ただひとつ――
自分で決める勇気。

―――――――――――――――――――――――――
🖤 終わり 🖤