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あこ
莫言/著
中公文庫
小説の舞台は、100年前の清朝末期の山東省。
ドイツの鉄道敷設工事が始まり、ドイツの横暴に怒った孫丙(猫腔の座長でもある)が反乱を起こすのが、事件の発端。
主な登場人物は5人。
銭丁(眉娘の愛人で県知事)は、孫丙(眉娘の実父)を捕らえる。
そして見せしめのために趙甲、小甲父子(眉娘の舅と婿)を使って残酷な極刑である「白檀の刑」に処すことになる。
父は罪人、舅と夫は処刑人、愛人が処刑責任者となった眉娘は、その狭間で幾重にも引き裂かれてゆく。
大きく歴史が転換しようとしている端境期に起きたこの出来事そのものが、猫腔(マオチアン)と言うひとつの劇仕立てになっている。
各章の冒頭には必ず猫腔の歌がはいる。
そして、語り手は先の5人であり、それぞれの視点から物語は語られていく。
とにかく読む者の肉体感覚を刺激する描写が素晴らしい。ここで人間は特別な生きものではなく、動物と区別のつかないものとして捉えられている。
そこには、血や汗や涙や鼻水や体液や糞便にまみれ、全編に芝居の哀切な歌と猫のニャオニャオという鳴き声がひびきわたる。
また、刑罰描写も凄まじい。これでもかと残酷な処刑が描かれていく。
しかしこの本の素晴らしいのは、そうした肉体を刺激する描写だけにとどまらない。
登場人物は一見冷酷無比だったり、好色だったりするのだが、その実、人間味に溢れているいいヤツ揃いなのである。
後半では、猫腔の「芝居」仕立てが中心になり、全てを竜巻のように巻き込みながら、悲劇的な大円団を迎えていく。
その描写も素晴らしく、この作家の力量に唸らせられる。
読み終わった後は、しばらく力が抜けたように感じられたほど、エネルギーのある小説であった。ニャオニャオ🐈

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1人立ってるだけなの何?w
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