朝靄の中を、濡れた石畳が光る。街灯の下で、猫が尾を振りながら歩いていく。風が運ぶのは、遠くのパン屋からただようバターと小麦の匂い。誰も起きていない路地に、靴音だけが響く。空は薄紫。雲の切れ間から差す光が、濡れた屋根を金色に染めていく。こんなふうに、言葉の端々に風景を宿せたら。