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イグアナ
イグアナの家にゆくバスは、1時間に2本しかない。大通りに出ればいくらでも捕まえられるけど、雨の日や疲れた日はそのバスに乗りたい。
電車が遅延して、いつもより一本遅いバスに乗った。運転手さんが女性だった。明るくはきはきと、何より楽しそうに働いている姿が、疲れた乗客のイグアナの目には眩しかった。
確認の点呼の声を聞きながら揺られていると、バスは止まった。混んだ車内からは一部しか見えなかったけれど、降りようとする女性の腕を運転手さんがしっかりと掴んでいた。白い手袋が目に焼きついた。
何事かと思った瞬間、死角から歩道を自転車がものすごいスピードで走り抜けていった。
運転手さんは何事もなかったかのように、右よし、左よし、前方よしと確認して、お気をつけて、と閉まるドアに呼びかけ、バスを滑らかに発車させた。降りた女性は呆然としていて、おそらくイグアナ以外の乗客も、車内から彼女を呆然と眺めた。微塵も慌てたところのない運転手さんの真っ直ぐ伸びたうなじと一つに結んだ髪の毛が、信号機の光に照らされていた。


Beautiful
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supika2
イグアナさん 素敵なお話ありがとうございました! こんな光景を目にした日は 心がきれいになりますよね✨ 見習いたい!少しでも! 心にきざんでおきます[照れる]
𖤣𖥧𖥣𖡡𖥧とねり𖤣𖥧
運転手さん、かっこいい…
し〜ぷ☆*。
女性運転手さんならではのさりげない気配りですかね✨✨✨ 素敵です。+゚(*´∀︎`*)゚+。。*゚
橙
素敵だ プロフェッショナルだ
りりー🫖
本当の安全確認ですね[笑う]