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キキ
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第二話:カウンター越しの予感
深夜一時。新潟の宿のフロントに立つけーぞーは、静まり返ったロビーでスマートフォンの画面を眺めていた。
画面には、あきっくすが開いている「ルーム」のアイコン。すでに数人が上がって話しているようだ。
彼女はマイクをオンにするか迷い、結局、自身の「投稿」画面を開いた。
『夜のフロントは、誰かを待つのにちょうどいい。』
たった一言。そこに、宿のカウンターに置かれた古い真鍮のベルの写真を添える。
数秒後、その投稿に最初のコメントがついた。
『そのベル、いい音がしそうですね。』
名前は、テスター。名古屋の出張帰りだろうか。プロフィールには神社の写真が並んでいる。
その直後、ルームからあきっくすの声が聞こえてきた。
「あ、けーぞーさん、投稿見たよ。そのベル、鳴らしたら誰か来るの?」
あきっくすの、少しお節介で、けれど心地よい距離感の声。
けーぞーは小さく笑い、ようやくマイクをオンにした。
「あきっくすさん、こんばんは。…鳴らしても、今は誰も来ないよ。ここは雪に閉ざされてるから」
「いや、意外と誰か行くかもしれないよ。テスターさんとか、今ちょうど新潟の方にいるって投稿してたし」
あきっくすの何気ない、予言のような一言。
その時、宿の重い自動ドアが開き、冷気と共に一人の男が入ってきた。
男はカウンターに近づくと、けーぞーの投稿にあった通りの真鍮のベルに手を伸ばす。
「遅くにすみません。予約していたテスターです」
けーぞーは目を見開いた。画面の中のあきっくすの部屋では、まだ何も知らない主が「あ、会津のまぁずにょんさんが来た」と楽しそうに挨拶をしている。
ルームを通して重なる声と、現実のカウンター越しに交わされる視線。
あきっくすが無意識に放った言葉が、新潟の夜に小さな火を灯した瞬間だった。
(つづく)
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