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こう
6年2組は今日も賑やかだった。
朝の教室は、外行きの自分に切り替わる瞬間だからだろうか、みんないつもの2割増しくらいに元気が良い。ランドセルを背負った同級生がひっきりなしに教室に入って来ていた。
湯千葉ゆちばくんもその中の一人だった。
「やぁ、田中くん、おはよう」と湯千葉くんが僕に手を挙げて言った。
「あ、おはよう。湯千葉くん」 僕は湯千葉くんに声を掛けられて少し気持ちが昂たかぶる。なぜなら湯千葉くんはたくさんの登録者を抱えた現役小学生 YouTuber なのだ。真面目で誰にでも優しくて、クラスの中でもいつも話題の中心にいる人気者だ。
だが、その日の湯千葉くんは少し様子がおかしかった。
「湯千葉くん、なんだか元気ないね。どうしたの?」と僕は何気なく、なんなら定型文的な雑談の一環として、問いかけたのだ。
それが始まりだった。
湯千葉くんが僕に言う。
「いや、今日の朝、嫌な 【ち◯こ】 見ちゃってさぁ」
え、と返答に詰まる。聞き間違いか? 今卑猥ひわいな言葉が聞こえたような。 僕が黙っていると、湯千葉くんがまた言う。
「【ちん◯】 にうなされたの久々だよォ」 湯千葉くんが、まいったな、と顔を歪めた。
「ち◯こにうなされたの!? どんな状況!? てか嫌なち◯こ、て何!? パパのち◯こ? パパのち◯こ見ちゃったの?」
湯千葉くんは「いや、なんでやねーん。全国のパパさんに謝りなよ」と楽しそうにツッコミを入れた。
え、なんで僕がツッコまれてるの!? パパのち◯こを嫌なち◯こ呼ばわりしたのは湯千葉くんなのに!?
僕は混乱していたが、湯千葉くんはどこまでもいつも通りで「あ、今日、国語で作文発表だったよね。田中くん、やってきた?」と話題を変えてきた。僕は「嫌なち◯こ」がまだ気にかかったが、仕方なく返答する。
「え、あ、うん。将来の夢の作文でしょ? やったよ。湯千葉くんは?」
「僕も今朝、ギリギリ仕上がったんだよ。でも、内容これで良いか不安でさ。ちょっと聞いてくれない?」 湯千葉くんが申し訳なさそうに手を合わせる。
「うん。いいよ」と僕が快諾すると、湯千葉くんがいそいそと原稿用紙を取り出して、早速読み上げだした。

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