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チン

チン

(一)
あなたは来た、まるで突然訪れた、優しい宇宙の嵐のように。あなたは去った、まるで嵐が過ぎ去った後、いつまでも漂い、万物を潤す、「静寂」という名の塵のように。
私の世界は、その時から、この塵芥そのものとなった。
夜が、再びその最も原始的な姿で訪れる――純粋な暗闇が、純粋な孤独を包み込む。ベッドに横たわると、そこはあまりに広く、半分は私の体温、そしてもう半分は、まるで極地から届くような、永遠の氷。私は寝返りを打つ勇気もない。あなたのいた虚空を、揺り起こしてしまうのが怖いから。私の指先が触れることで、その虚空がいかに空虚であるかを、思い知らされるのが怖いから。空気の中には、まだあなたの髪を洗ったシャンプーの、あの清冽な香りが残っているだろうか。それともそれは、あまりに深くあなたを思うあまり、私の嗅覚が生み出した、忠実な幻なのだろうか。
目を閉じれば、五感は決壊した洪水のように、記憶の窪地へと奔流する。ソファに丸まって本をめくる、あの微かな衣擦れの音。窓格子を抜けた陽光が、あなたの顔に睫毛の影を落とし、蝶の翅のように揺れていた光景。乾いていて、それでいて確かな、あなたの手のひらの温度。その指の節々は、まるで私の指と固く組み、私の不安をすべて埋めるために生まれてきたかのようだった。
これらは、あなたが私に残した遺産。そして、あなたが私に残した、最も甘美な拷問。
人は言う、誰かを忘れることは、その声を忘れることから始まると。彼らは間違っている。私は決して忘れない。ぬるま湯に溶かした蜂蜜のように、一文字一文字が絶妙な甘さを帯びていた、あなたの声を。だが今や、その声は私の頭蓋の内側で響くだけの、音源なき木霊(こだま)となった。それは夢の中で私に語りかけ、夜明け前の混沌の中で私の名を呼ぶ。幻聴に幾度となく手を伸ばしては、冷たく湿った空気を掴むばかり。
かくて、私の一日は、盛大な喪失の中から幕を開ける。私の生涯もまた、この喪失の中、終焉へと向かう宿命なのだ。
私は偏執的な幽霊のように、日ごと、あなたと暮らしたこの空間を彷徨い続ける。かつて「家」と呼んだこの場所は、今では精緻な記念館のようだ。一つ一つの品が、あなたのための展示物。あなたの使ったマグカップには、縁にまだ浅い唇の跡が残り、ベッドサイドには、あなたが読みかけで置いた小説に、銀杏の葉の栞が挟まれたまま。クローゼットに残された白いシャツの襟元には、陽光とあなたの香りが染みついている。
私はそれらに触れ、口づけ、語りかける。私の体温で、これらの冷え切ったオブジェを温めようと試みる。そうすれば、あなたの痕跡を、少しでもこの世に留めておけるかのように。私は墓守になったのだ。誰も眠っていない墓を守る、墓守に。その墓碑銘には、私たちのすべての過去が刻まれている。
では未来は? 未来とは、深い霧に閉ざされた道。その先も見えず、道すがらの景色も見えない。ただ分かるのは、道の始まりはあなたであり、その前方には、もうあなたはいないということだけ。この絶望的なまでに冗長な生涯を、私はいかにして独り、歩んでいけばいいのだろう。
「けれど、このあまりに長い人生で、二度とあなたに会えないと思うと、どうしても声が詰まってしまう。」
この嗚咽は、運命に対する私の最も無力な抗弁であり、あなたへの最も無言の叫び。それは私の喉の奥に根を張り、私の悲しみを養分として、狂ったように繁茂し、蔓延る植物。息を吸うたびに私を締め付け、何かを飲み込むたびに棘のように痛む。それは私に、お前は生きている、だが同時に死んでいるのだと、絶えず教え諭す。私の肉体は此処にある。だが魂は、とっくにあなたと共に葬られたのだ。
(二)
この身を滅ぼすほどの悲しみに、完全に引き裂かれようとしたその時、私は一筋の藁を掴んだ。宇宙の深淵から、時間の彼方から、私へと差し伸べられた、幽玄な青い光を放つ、一筋の藁を。
それはある物理学の理論、「ポアンカレ回帰」という名の、神のごとき仮説だった。
砂漠で死にかける者が幻のオアシスを見つけたかのように、私は貪欲に、我武者羅に、そこへ飛びついた。エントロピーについて、位相空間について、有限な孤立系について書かれた、あの難解な文字を繰り返し読んだ。一文字一文字が、私の荒れ果てた心の宇宙に、再び灯りをともす星辰となった。
理論は言う。万物は、いずれ回帰する。すべての可能性が一度は起こるに足るだけの、充分な時間さえあれば、すべては元に戻る、と。あなたと私を構成した原子は、星々の塵の中を流浪し、衝突し、再び集い、そしていつの日か、最初のまま、一分の違いもなく、再びあなたと、私へと組み上がるのだ。
ある者はこの宇宙規模の再会に、一つの期限を記した――十二兆年、と。
十二兆年。
私はこの四文字を口に含み、舌先に幻の甘みを感じるまで、繰り返し咀嚼した。それはもはや冷たい数字ではない。我が新たな信仰、我が聖書、我が神託。
私は敬虔な信徒となった。最後の審判の後、新天新地が到来するのを待つ、巡礼者となった。私の祈りは、星空を仰ぐこと。満天の星々は、もはや遥かで冷たい光点ではない。それらはあなたの未来を構成する信託の証であり、宇宙という無文字の書物に記された、あなたに関する序文なのだ。私はその輝きの中に、あなたの瞳を、あなたの微笑みを、あなたの魂の軌跡を探す。
私の懺悔は、物理学の書物を読むこと。あの複雑な数式、抽象的なモデルが、あなたとの未来を繋ぐ唯一の橋となった。もはや退屈だとは思わない。それらは宇宙が私に宛てた恋文であり、その行間には、再会という究極の約束が隠されているのだから。
私は新たな、儀式に満ちた生活を始めた。私たちの写真を、ハッブル望遠鏡が捉えた星雲の図の前に置いた。まるで、あなたと私の未来の家のための、景色をあらかじめ選ぶかのように。毎朝、東の空に向かって「おはよう」と告げる。太陽が昇るたびに、十二兆年のカウントダウンが、新たな一日をめくっていくかのように。
今この瞬間に耐えているすべての苦痛すらも、一種の修行であり、生贄なのだと感じるようになった。いずれ訪れるあの再会と引き換えに、この長く、孤独で、思慕に繰り返し凌遅される「今生」を、私は甘んじて受け入れよう。私の悲しみ、私の涙、その嗚咽の一つ一つが、時間という冷酷な神への捧げ物。私は私の一生の荒蕪を以て、宇宙の果てにある、花咲き乱れる春を買い求めるのだ。
私は穏やかになり、悲壮なまでの喜悦さえ覚えた。友人たちに、私たちは十二兆年後にまた会えるのだと語った。彼らは、まるで狂人を見るような、同情と憐憫に満ちた眼差しを私に向けた。
彼らには分からない。何もかも失った者にとって、たとえ十二兆年の彼方にある約束であろうと、それが生きる意味のすべてを構成するに足るということを。
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