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イグアナ
イグアナ家のテレワーク環境調査、との名目で、上司が訪問に来ることになった。久々のオフィシャルな来客のため本棚に本を戻すことから初めて、そのほこりの量に咳が止まらなくなったので、抜本的大掃除を始めたら、編み針の陰干しの用意だけで1時間を要した。
編み針(かぎ針にはまだ行き着いていない)は、イグアナが自分で購入したもの、大叔母や祖母から譲り受けたもの、遺品としていただいたものがある。その頃の流行や個人の趣向で、アフガン針が多かったり、ジャンボ針があったりするが、メインどころはやはり6から10号なのだろうか。数があった。二本針、四本針、輪針とひたすらにほこりを拭き取って行った。
歳をとるごとにイグアナは用心深くなって、弱気にもなって(臆病なのはもともと)、ひとつのことに100%の力を注ぐことが出来なくなった。
編み物一本も、編み物を嫌いになりそうだし、かといって今の仕事に残りの職業人生を賭けるほど、興味も持てない。
黙々と針の手入れをしていると、祖母や大叔母の顔が思い出された。正確には、佇まいや癖のようなもの。顔の造形そのものではなく。
今よりずっと家事が重労働だった時代、決して裕福ではなかった家庭の女性たちは、忙しい家事育児の間に編み物をしていたのだろうか。必要に迫られてか、息抜きにか。おそらくそのどちらでもあったのだろう。
イグアナが初めて祖母にプレゼントしたのは、編み込みのワンピースを着たうさぎの編みぐるみだった。祖母は受け取るなりスカートをめくって、
綺麗な糸始末
と言った。祖母らしい、と思った。
イグアナも連なるのだろうか、その連綿とした系列に。バトンを受け取って、誰かに渡すのだろうか。なんだろうこの気持ちは。
切ないような、幸福。


泡
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イグアナ 投稿者
そしてこうなる。 いとあはれ。
まつ
こんばんは♪ イグアナさんの素敵な投稿✨ 祖母は裁縫が得意だったのですが、私はお裁縫が苦手で、でも何か祖母から受け継ぐものが欲しくて、私は栗の渋皮煮を選びました。 バトンの中にある私と祖母の思い出や生活の背景、でもどうやって表現するのかわからなかったけど、イグアナさんの文章に私もそうだな、と思いました。
ふくふく18
イグアナさん*ˊᵕˋ)੭ わたしはかぎ針編み派です 亡くなったお義母さんの昭和の物を使ってます(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) 編み始めたら時間を忘れますね
ぱんだだだだ
ぱんだの祖母も編み物得意やったわ というか、手芸と名のつくものには全て手を出してた ぱんだもお裁縫は好きやけど、メンタルが弱ってミスが多い今は大物には手を出さないことにしてる 編み棒の数すごいね~ヽ( ・∀・)ノ
し〜ぷ☆*。
社会人になっても家庭訪問Σ(・艸・*)エェ!! そんなのあるのね[大笑い] うちの母も専業主婦でしたけど編み物🧶で色々着せてくれたり手袋や小物類も作ってくれてました♪ 当時は当たり前で嬉しかっだけど今考えるとすごい良き時代でしたね✨ 母がなんでもできたので私は何もできません٩̋(๑˃́ꇴ˂̀๑)✨