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おおくに
〈背景〉
夢の中でエレベーターに乗っているハルと透。透は自動で動く自分の目を通して外を眺めている。
〈本文〉
11階が最上階だった。9階で扉が開いて、ハルくんは迷いもせず左に曲がると、僕がついて出た時にはもう消えていて、すぐ目の前に半開きのドアがあった。それを数秒間見つめていると思うと僕は振り返り、短い通路のすぐ正面と右側に閉じた扉を見つけただけで、挟まれた隅に置かれたサボテンの鉢も、小さく干からびて色彩を与えなかった。左手にある非常階段を覗いて上に下に確認しても、人影はなく光を遮る隣のビルが角度を変えるだけだった。動いている僕はこれが夢だと知らず、ハルくんが一瞬で部屋に入り音沙汰がないことよりも、自分の目を疑っているようだけど、目の中で見ている僕は、確かにハルくんがエレベーターから左に曲がって消えたのを見たから、あの半開きのドアの向こうに彼がいるに違いなかった。
「透、こっちだよ」
ほら、やっぱりあのドアの向こうにいる。夢ならそういうものでしょ。僕は早歩きで戻ると、ゆっくりとドアの残りを開けた。まっすぐ暗い廊下の奥、体育座りした子供の横姿が見えて、真剣な表情でゲーム機のコントローラーを握りしめている。僕はまた固まって、なんとなく聞き覚えのあるゲームの小さな音に耳を澄ますと、再び奥から聞こえたハルくんの声に促されて、お邪魔しますと靴を脱いであがった。子どもの靴がいくつかと、地味な色のパンプスが2足あった。そこで僕は、あの子を見たときの違和感の正体に気づいた。これはハルくんの回想なんだ、あの子は小学生のハルくんで、これから母親が帰ってきて怒られる、じゃあ3日連続でこれを繰り返すのかな、と先走る自分の予想に興奮している間も、僕はカーペット地の狭い廊下を心配そうに歩いている。
〈狙い〉
テンプレ的夢の展開を、文章の得意分野に引き寄せて書く(透の心理描写を二重にする)
〈反省〉
もう少し読みやすく、文体にリズムを与えたい。読者の文章を読んでいく時間と認識能力に対して、適切な量の思考や運動、イメージを盛れば意味が伝わりやすく、それらをバランス良く配置出来れば文体になりうると思うが、出来ない。自分はまず、朗読で内容が伝わるレベルを目指す。
対比表現、否定形で夢の色を奪ったこと、透の思考で廊下を引き伸ばしたことは良い。
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むむQ
描写が若干くどいかな。イメージしにくいと思う。
takion
夢の中の風景、という雰囲気がよく伝わってくるいい情景描写だと思う。 ご本人も気にしている通り、読みやすさという点に自分も引っ掛かりを覚えた。 個人的には、一文がもう少し短い方が理解しやすいかな、と思う。 現状の一文を、前半と後半に分けるだけでもかなり読み易くなるんじゃないかと。
キリウ
全体を通して、描写の通り決して良い思い出ではない仄暗さが感じられる表現ですね 明晰夢をみたことはありますか?