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とある孤島ハンニバル
そこにはおよそ10万の人々が暮らす
彼らの国王ドムマラヤはその日、ある妙な噂を聞いた。

――噂の内容は、あまりに荒唐無稽だった。

「島の“裏側”に、もう一つの王国が現れたそうです」

そう告げたのは、朝の謁見に現れた老宰相バルガンであった。ドムマラヤ王は玉座に深く腰掛けたまま、片眉をわずかに上げる。

「裏側だと? ハンニバル島に裏も表もあるものか」

ハンニバルは円形の孤島で、周囲は断崖と荒海に囲まれている。古くから地図は完成され、洞窟も森も、すでに調べ尽くされたはずだった。そこに“もう一つの王国”など、存在する余地はない。

しかし宰相は首を振る。

「噂は港町から始まりました。夜明け前、霧の中から見知らぬ船が現れ、誰とも言葉を交わさぬまま消えたと。翌日、島の西端の村が一つ、地図から消えていたそうです」

「消えた?」

「正確には、“なかったことになっていた”と」

その言葉に、玉座の間の空気が冷えた。消えた村の名を知る者はいない。住んでいたはずの人々の顔も、思い出せない。ただ、そこに何かがあったという“違和感”だけが、島のあちこちに残っているという。

ドムマラヤ王は立ち上がり、窓の外に広がる海を見つめた。青く、穏やかで、何一つ変わらない海。しかし王の胸には、言いようのないざわめきが生まれていた。

「この島に、我が知らぬものがあるというのか」

その夜、王は夢を見た。

月のない空の下、ハンニバル島が二つに割れている。一方は見慣れた自国、もう一方は影のように歪み、そこには人の形をした“空白”が立ち並んでいた。彼らは口を持たず、ただ一斉にこちらを指差している。

――王よ、そちらが“表”なら、我らは“真実”だ。

目を覚ましたドムマラヤの額には、冷たい汗が滲んでいた。

翌朝、王は密かに命じる。

「島の裏側を探れ。地図にない場所を、記憶に残らぬものを。たとえそれが、この国の成り立ちそのものを揺るがすとしてもだ」

こうして、孤島ハンニバルの“存在しない半分”を巡る探索が始まる。
そして王はまだ知らない。
その噂が、10万の民を守るための警告だったのか、
それとも――選別の始まりだったのかを
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