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薄明

薄明

お友だちとはじめて映画館で観た映画は?お友だちとはじめて映画館で観た映画は?

回答数 11>>

トロン
近年公開されたやつじゃなくて、昔のトロンです

高校の頃かな、『パーソナルコンピュータ』って言葉が出始めていた頃で、コンピューターってものが身近になり始めていたので、すごく未来感を感じたのを覚えています
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第二話 (全二話)


「……何をだ」

男は、キャンバスの前に立った

「自分、“画家になれへん=才能がない”思っとるやろ」

「……違うのか」

「ちゃう」

男は、きっぱり言った

「才能がないんやない
“使い道を間違え続けとる”だけや」

男は、床に散らばったスケッチブックを拾い上げた
パラパラとめくる

人物
風景
街角の何気ない表情

「自分、何が好きや?」

「……絵だ」

「ちゃう
“描くこと”か、“観ること”か、“伝えること”か、どれや」

言葉に詰まった

「……全部、好きだと思ってた」

「ほら出た、"全部好き”言う奴はな
大体“何も選んでへん"ねん」

きつい
でも、否定できなかった

「自分な、ゴッホを見て何に心打たれた?」

「……情熱。孤独。狂気。生き様」

「ほな聞くで」

男は、ぐっと距離を詰めた

「自分は、誰の“情熱”を、誰に届けたいんや」

言葉が、出てこなかった

「四十年生きて、まだそこが言えへんのはな
才能の問題やない
“考えるのを避けてきた”からや」

男は、畳みかける

「画家だけが、絵に関わる仕事やと思っとる時点で、視野が狭すぎるんや」

指を一本ずつ立てた

「美術教師」
「絵本作家」
「舞台美術」
「ゲーム・映像コンセプトアート」
「美術館スタッフ」
「アートディレクター」
「似顔絵師を“仕事”として確立する道」

「自分な、全部“中途半端”にかじって
“画家じゃないから負け”って拗ねとるだけや」

胸が、ひりついた

「厳しいな」

「当たり前や
四十の男を、慰めてどないするねん」

男は、静かに続けた

「自分はな、“描ける人”やのうて
“観て、感じて、形にできる人”や」

「……それが、何になる」

「なるかどうかは、自分が決めるんや」

男は、スケッチブックを彼に返した

「自分が一番生き生きしとるの、どんな時や?」

しばらく黙った後、彼は答えた

「……誰かに、絵の話をしてる時
この絵が、なんで好きかって、語ってる時」

男は、ニヤっとした

「ほらな
自分、“描く人”である前に、“語れる人”になっとるやん」

「……語って、どうする」

「伝えるんや
教えるんや
繋ぐんや」

男は、低い声で言った

「ゴッホ君が孤独を感じとったんはな、才能がなかったからやない
“理解者が少なかった”からや」

彼の喉が、鳴った

「自分は、その“理解者”になれる側の人間や」

しばらく、沈黙が落ちた

「最後に一つだけ言うで」

男は、真正面から彼を見た

「自分、才能がないんやない
“夢の形を更新できてへん”だけや」

「画家をやめるかどうか、今すぐ決めんでええ」

「でもな、“何者でもない自分”を、これ以上放置すんなや」

「選べ
捨てろ
腹決めろ」

男は、踵を返した

「四十から輝く奴はな
“過去を言い訳にせえへん"奴だけや」

ドアの方へ歩きながら、最後に一言だけ残した

「自分の人生、まだ“下書き”や
清書を描くかどうかは、今からや」

男の姿は、いつの間にか消えていた

アトリエに残された男は
もう一度、スケッチブックを開いた

不安は、消えていない
でも、初めて――
“別の光”が、見えた気がしていた


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