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黒縁メガネ
終電を逃したわけではない。ただ、帰りたくなかっただけだ。
新宿の雑踏から少し離れた裏通り。雨上がりのアスファルトが光を滲ませるなか、佐伯は缶コーヒーを手に、隣に立つ奈央の横顔を盗み見た。
「また来週も、仕事の打ち合わせってことで抜けられそう?」
奈央は声を落として言った。冗談めかしているが、その実、答えを恐れるような目をしていた。
「うん。なんとかするよ。……奈央こそ」
「私も大丈夫。夫は私の仕事に興味ないしね」
軽く笑った彼女の声は、どこか乾いていた。
互いに家庭がある。夫や妻と子ども、家の中に積み重なっていく日常の音。その全部から離れた、この数時間だけが、二人にとって現実であり、逃避でもあった。
佐伯は歩き出した奈央の後ろ姿を追い、ふと手を伸ばしてしまう。
腕を掴もうとした指先が、彼女のコートの布にかすか触れたところで、奈央が振り返った。
「……ダメだよ。外では」
「分かってる。でもさ……」
言いかけ、言葉がこぼれ落ちる。
“帰りたくない”という、子どものような本音だった。
奈央は深く息をつき、佐伯の隣に立ち直った。
雨で濡れた歩道を見下ろしながら、ぽつりと呟く。
「私ね、あなたといる時だけ、自分が誰なのか分かる気がするの。母でも妻でもない。仕事の役割でもない。ただの……私」
その告白に、佐伯は胸が痛んだ。自分も同じだった。
家では「父」として、会社では「上司」として、どこにも本当の自分の居場所はなかった。けれど、奈央と会う時だけは、言い訳も肩書きもいらなかった。
「じゃあ、せめて……あと10分だけ、一緒に歩こうか」
奈央は微笑んだ。弱くて、でも確かに嬉しそうに。
二人は肩を並べ、まだ湿った夜の街を歩いた。
少しの沈黙、少しの会話。触れない指先の距離が、逆に熱を帯びる。
交差点に差し掛かると、青信号が点滅を始めた。
「ここで、だね」
「うん。また来週……例の“会議”で」
奈央は小さく手を振って歩き出す。
その姿が雑踏に飲まれていくまで、佐伯は動けなかった。
やがて夜風が頬を撫でる。
彼はひとり、スマートフォンの画面を開き、奈央から届いていた短いメッセージを見つめた。
“明日から、またいつもの私に戻るよ。でも今夜だけは、あなたが私を見つけてくれたって、そう思っていたい。”
佐伯は画面を閉じ、深く息を吸い込む。
この恋は続くのか、終わるのか、それすら分からない。ただ、現実のすき間に落ちた小さな光のように、彼女の存在が胸の奥を照らしていた。
夜明け前の交差点で、彼はようやく歩き出した。
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megu
ふと、おもう。
線路は続くよどこまでも…
私もそう思っていたけれど…どうやら終点駅はあるようです。
そこで終わりにするのか…折り返し運転するのか…
自分次第。
さて、仕事始めます[照れる]
##ひとりごと #穏やかな一日

水溶き片栗粉
![かのん[女子力高い]](https://cdn.gravity.place/virtual/portrait/color/online/20230307/c41a3da4-c8fd-4488-91ee-7428aa7a45ba.png?style=5)
かのん[女子力高い]
人間関係億劫になった。ネット限定人間不信だし
恋愛、恋できなくなった。恋愛がトラウマになったけど!(´;ω;`)
でも!自己肯定感はめっちゃあがった!ほぼ病まなくなったし、
毎日自己暗示してるし、やればできる子(ง≧Д≦)งYDK!!と
生きてるだけで偉いって言葉大好き(*^ω^*)♡お気に入り!!
自分を労わって自分に素直に優しくできるようになったから!

ひま🌻
歌ったり踊ったりするのが好き
聴くのも見るのも大好き。
自分に出せない声とか音とか、見つけると嬉しくなるー!
ふわふわだったり、キラキラの衣装とかもめちゃくちゃ好き

me
ネイリストさんオススメだったけど
ちょっとゴテゴテしすぎたかな〜[冷や汗]
ネイリストさん美人の中国人なんだけど…
会話が面白いのよね[大笑い]
#ネイル

紅金魚
しかしながら先日、大盛りウドン白ご飯付きをカウンターで貪り食うておりましたら
隣のお兄さんにガン見されておりました
良くありますね
ウルシカ
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こーき

鎖輔
俺達のエモは????
まぁ楽しかったならなんでもええか

彩月

藤眉

🍫のわ
よかったね〜
(SPDじゃなくてこっちでも乗れてよかったね)

ポンカ
おしゃれ、かっこいい、芸術、清潔の感性が磨かれてきたかも

あんこ

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風呂キャンしたい気持ちも理解できる
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