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むー

むー

7年前の物語 供養

 
「ほんの少し時間をください」
道端で見知らぬ人に懇願された

『時は金なり』とは良く言ったもので
僕が居る世界は時間...即ち寿命が金になる 逆もまたしかり
僕はまだ若くて金が有り余っているので少しぐらいならと渡してあげた
その人はとても感謝して去っていった

コレで何度目だろうか
道を来る人来る人に懇願され
その度に少し金を渡している
懇願してくる人は皆ヨレヨレで
今にも灯火が消えそうな人ばかり
少し金をあげたぐらいでは
もって1日2日ぐらいだろう
もっと助けたい
気持ちは山々なのだが
そうなると今度はこちらが危なくなる

少し金を渡した人達は
1日2日延びた寿命で何かするのだろうか
遺書を書く 最後の晩餐をする
また誰かに懇願して寿命を延ばす...何にしろその人なりに
残された猶予を暮らしているのだろう
どこか冷たいような
気がするかも知れないが
もはやそれが僕の日常なので
感覚が麻痺してしまったのだと思う

なぜ異常が日常になってしまったのか
それは僕の村が衰退してるからだ
子供が少なく活気が無く
就ける仕事が無い
だから道来る人々が懇願してくるという訳だ
もし僕の村が活気があり栄えていれば
皆仕事に就き金を稼げていただろう

この村に産まれて稼ごうとすると
街の方に行かなければならない
当然街には就ける職がある
ならば街へ行けば良いのでは?
それが簡単には行けない
正確には行けたとしても意味が無い
街に行くためには街へと唯一繋がる
列車に乗らなければならない
そしてその乗車料金がとてつもなく高い
どれくらい高いかと言うと
働いてもただ働きになるぐらい高い
それなら街の住民になれば良いのでは?
それも出来ない事は無いが
住民IDを取得すると
毎日自動的に住民税が支払われ
もし職に就けなければ
またたくまに寿命が尽きてしまう

この村で暮らしている人は
皆街へ行く勇気が無かった人達という訳だが
正直僕も街へ行く勇気は無い
この村に居れば稼げはしないが
道行く人に懇願され金を
渡してしまうが
それでも渡した時の相手の笑顔や
人助けをしたという満足感は代えがたい
それに職に就けるような技術や能力を僕は持ち合わせていない
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