バスの中で、前の席の人は細巻きを、隣側の人はいなり寿司を食べていた。

「クリスマス出かけない？」
そう聞いてくれたのは女友達でした。(A子としましょう。)彼女がいないクリぼっちの俺は喜ばないわけがなく、その日はバイトの有給を使ってまで休みを取りました。
「じゃあ25日の16時に私んちきてー」
イルミネーションとかクリスマスマーケットとか。屋外のお出かけを予想していた俺。「まさかのおうちデート！？」と目を輝かせてました。
ワクワクして、服を買って、ファッションは本気を出して、匂いが苦手なのに香水も買いました。今思うと張り切りすぎて気持ち悪いですが。
そして迎えた12月25日。ネットの女友達にクリスマスプレゼントは何を買えばいいか相談して、プレゼントも買いました。あとは待つだけ。ワクワクして寒さなんてものはもう忘れてました。家を出るには早い時間。待ちきれずに支度をして家から出て、A子の家に向かいました。
「LINE♪」
スマホから音が鳴って、LINEを開きました。見えたのは。
「ごめん！！急遽予定入っちゃって、、🙏💦」
さすがに脳内では「は？ふざけんなよ。」と文字を打っていましたがここでキレるのはおこちゃま。俺は長男だ、、！！我慢だ！！と竈門炭治郎の如く自分に言い聞かせ、やっとの思いで「おけ」とだけ打って返しました。もう1つ。LINEが来ました。ですがそれはA子からではなく、同じバンドのドラムを叩いてる子でした。
「今から来れる？」
「神は存在するんだ。そうか今日はイエス・キリストの誕生日だ。」キリストに感謝をしながら俺はドラムの子の家に向かいました。
ドラムのこの部屋にはケンタッキー、ドミノピザ、ケーキ。tuki.もびっくりするほどの最高のフルコースがずらりと並んでいました。それを見て、A子にドタキャンされた俺は感極まり、少し泣きました。ドラムの子は気味悪がりながらも話を聞いてくれ、最後には断られた悲しみも寂しさも、終いにはA子のことさえ忘れて、友との充実した聖夜を楽しみました。ですがその友に。A子のことをまた思い出させられる出来事が起こります。
一緒にいたギターの子からスマホを見せられました。それはインスタのストーリーのようでした。
「これA子じゃないの？」
そう言われて見せられたのは、露出が多めのサンタコスをするA子。と。A子とキスをしている上裸の男がいました。
俺はその時初めて、裏切りに対する爆ぜり猛る殺意、憎悪、そして、絶望を、人生で初めて味わいました。
その後何を血迷ったか、俺は同性のバンドメンバーとキスをしました。

きっと太巻きだね！笑

バスの中で、前の席の人は細巻きを、隣側の人はいなり寿司を食べていた。