夜が長くなると思い出す、あの日の心残り

夜が長くなると、ついつい色んなことを考えてしまいます。
あまり後悔はしない性格ですが、心残りなことがひとつ。

僕には何人か写真好きな仲間がいて、不定期に集まっては、撮影に出掛けていました。
仕事や経歴、年齢もバラバラで、写真好きと言う共通点だけで集うそのメンバーの1人が、仲間には何も言わず、空へと旅立って行きました。
その事実を知ったのは8年前の今頃で、その時既に旅立って1カ月以上経過した後でした。

30を過ぎて間もない年齢で、癌と必死に闘っていたそうです。
そんなこととは知らずに、連絡が無いとは思いつつも、仕事が忙しいんだろうな、くらいに思っていました。

彼は本当に鉄道が大好きで、全国を列車で旅していて、ひとり寝台列車に乗って北海道へ行き、雪の中でも撮影スポットへ出掛け、乗ってきた列車を撮影するくらいの強者でした。
特に古い車輌が好きで、消えゆく風景に想いを込めてシャッターを切っていると話していました。

鉄道に詳しくない僕やメンバーは、一緒に鉄道を撮影することは最後までありませんでした。

彼は彼で、僕らの撮影会も楽しんでくれていたようで、桜や様々な場所を一緒に撮りに行きました。

病気のことを知られたくなかった様で、ごく一部の人しか彼の闘病生活を知りませんでした。
若かったことが癌の進行を早めてしまったそうで、旅立つまでの時間は短かったと聞いています。

彼は細身で、顔も悪くないのに不器用な性格で、自虐的に彼女が出来ないことを話していたのを昨日のように思い出します。
他人に変わり者扱いされても、好きなことをやっていたい、と言う想いは、僕と同じで、多少趣味や被写体が違ってもカメラの話でよく盛り上がりました。

きっと、今頃この世からは消えてしまった車輌に乗って、色んな所を旅してると。もう乗ることの出来なくなった車輌から、鉄道好きの仲間に自慢してるのかな…

病気のことを知らなかったとはいえ、お見舞いに一度も行かず、何もできなかったことが悔しくてなりません。
共通の友人が、「忘れないであげることが、責めてもの手向けだ」と言った言葉が胸に刺さりました。

鉄道などを撮る時は、彼への思いを込めて、シャッターを切り続けます。

新也、ずっと忘れないから！

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