勝海舟の言葉から考える、自己価値の再定義と現代社会の矛盾

共感で繋がるSNS

投稿

さとうゆーき

2023/01/06

「自分の価値は自分で決めるものさ」
これは勝海舟の言葉だ。
ありふれた名言の一つのように思えるが、時代に逆行する言葉でもあると思う。

「SNSでフォロワー数が100万人超えています」
「東大卒です」

社会が「他者からの評価」と「社会的信用」に依存している。ずいぶん前からそうだったようにも思うし、ここ10年で大きく変わったようにも思う。ただ少なくとも、フォロワー数で社会に影響力を発揮できるSNSの普及は、社会の価値観を大きく変えたのではないか。

こうした流れの中で社会が「他者からの評価」と「社会的信用」を重視すればするほど、「自分の価値を自分で決める」という価値観が軽視されていくように感じている。

自分の価値は他人が決めるものではない。自分の価値は、自分にしか判断できないものだ。なぜなら、自分のとった行動とその責任というのは、自分にしか分かり得ないものだからだ。他人に判断できるものではない。しかし、その価値観が蔑ろにされている。

「学歴や年収こそ自分の価値を客観的に表すものだ」
という意見もあるだろう。学歴や年収は自らの努力と能力が反映されたものなのだと。
しかし学歴や年収は、生まれた家庭が裕福かどうか、つまり運に大きく左右される。ゆえに「学歴や年収がその人の価値を表す」と断言することは難しい。※マイケル・サンデルの能力主義批判

「客観的な判断基準が必要だ」
自分の価値を自分で決めることは主観的な情報であり、社会での判断基準にはならないという意見もあるだろう。しかし「他人からの評価」は一見客観的だが簡単に情報操作が可能であり、嘘か本当か判断がつかないことも多い。
蹴落としたい相手の悪い噂を流すような悪質なやり口も横行している。
一度信頼を失えば回復するのは困難だ。例え真実が潔白だったとしても。
客観的＝事実とは限らない。

しかし社会はこれからも「他人からの評価」と「社会的信用」に依存し続けるのではないか。
いま世界を動かしているのは、「他人からの評価」と「社会的信用」に依存して影響力を発揮してきた人たちだ。これまでも、他者にレッテルを強制的に貼り付け色分けすることで、社会を作り上げてきた。これからも自分たちにとって都合の良い社会を目指していくだろう。

「自分の価値は自分で決めるものさ」
そんな言葉すら、誰にも届かない時代になってしまうのではないか。