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ルサンチマン

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映画【愚か者の身分】5点満点で4.4点

今年の評価の高い人気作品である国宝、鬼滅の刃、チェーンソーマンあたりは自分的には普通だったのだけど、この映画はめちゃくちゃ良かった。 

アウトロー的な作品であり、ボクはアウトロー的なものをあまり好まないことを考えると、アウトロー的ジャンルではおそらく過去ナンバーワンかも。

ゴッドファーザーよりボク的には全然上。

ボクがアウトロー作品があまり好きではないのは、強い者がそれを活かして弱い者を痛めつけたり、騙したりすることなど馬鹿らしいし、ましてやそこにスポットライトが当ててカッコよく見せようとするのも嫌いだから。

ボクは女中心の身内構成の反発からか格闘技も多少なりともかじってるけど、それをいいことにイキったりするのはカッコ悪いと思ってるし、なるべく低姿勢でありたいとは心がけてはいる。

だから、路上の伝説とか言って朝倉未来を持ち上げたり、ブレイキンダウンみたいなのが流行って格闘技と喧嘩、もしくはアウトローと結びつけられのは嫌。

というわけで、この映画の冒頭に北村匠海演じるタクヤと、タクヤを慕う林裕太演じるマモルが女性のフリして男どもを誘い出すシーンから正直不快だった。

嫌いな映画観ちゃったかなというのが第一印象。

彼らは男どもと会う約束を取り付けた後に、女を向かわせ、意気投合したところで戸籍売買の話を持ち込む。
それを仕事としている。

彼らはプライベートでもこの手のゲスらしい汚い笑い声をあげながら闊歩している。

だが、ボクを不快にさせるほど彼らの演技が素晴らしいことに気がつき、いつの間にか物語に引き込まれてゆく。

素晴らしいのは彼ら2人だけではない。

嶺豪一演じる佐藤という男は、タクヤとマモルの上に位置し、半グレ組織の幹部で彼らに仕事を手配したりする中間管理職的な奴なのだが、まあ怖い。

映画内で登場してる時間はそれほど長くない佐藤だが、この怖さを醸し出せるのは役者として本当に凄いと認めざるを得ない。

自分より強いから感じる類の怖さではなく、喋り方とか喋る間とかから自然とで出来てしまう、キモの座り方や覚悟、何をしでかすかわからない凶暴性が見え隠れして本当に恐ろしい。

この怖い佐藤の上には半グレ組織のトップのジョージ役の田邊和也がまた怖い。

183cmでデカく、骨格も骨太で、明らかにフィジカル的に強さが溢れているし、国籍不明で何人か分からない風貌も相まって、めちゃくちゃいい味が出ている。

田邊和也という役者は知らなかったので調べてみると、時代劇等での殺陣を相当稽古していたり、スタントなしで派手で危険なアクションを自らこなしていたりするらしい。

確かに、この映画内での格闘シーンなんかは、格闘技かじってる自分から見てもパンチや蹴りは身体の使い方をよく理解しているのがわかるし、ちゃんと本物感がある。

昔、リアル鬼ごっこってドラマで、鬼から逃げる主人公役が本郷奏多だったが、明らかに運動神経がイマイチな人の走り方がどう編集しても隠せず、鬼から逃げる役としては緊迫感もクソもない感じになったので、本物感はめちゃくちゃ重要である。

そういう意味から、フィジカル的に強いジョージ役を田邊和也は隙なく完璧にこなしていたし、本当に恐ろしかった。

あと、この映画が素晴らしいのはセリフ回しで、映画的でキャッチーな嘘っぽいセリフとかがほぼなく、ノイズにならない。

知名度的には主役級の綾野剛演じる梶谷は映画の中盤あたりまではさほど登場しないのだが、この映画が面白い理由の一つとして、タクヤ、マモル、梶谷の視点が同じ時間軸の中で使い分けられているところで、梶谷視点が中盤から後半にかけての展開だからということに依存する。

視点が変わっても、ちゃんと同じ場面を別アングルのカメラで撮った映像を使うことで、どの場面にとどの場面が繋がるか明確にわかるし、視聴者が混乱することがないのも素晴らしい。

ちなみに梶谷は、タクヤを半グレ組織に誘い入れたような人物であり、かつ梶谷自身も組織に利用されている側でもある。

綾野剛はあまり好きな役者ではないから悔しいけど、こういうどっちつかずな役を演じてる彼はどう拒んでも魅力的に見えてしまうなぁ。

総括としてホラーより怖いヒトコワ映画だけど、グロは少なめだからグロ耐性ない人にも観て欲しい。

都心の映画館では1ヶ月ほどで終わっちゃったから、大人気とまではいかなかったのかな。

すごく丁寧に作られた傑作なので観てる人が少ないのなら残念。
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