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じゅぴた

じゅぴた

暇な時に書いた文章
是非沢山の人に読んでほしい

ー進んでいく時間や変わりゆく情報は必要な事。問題は、それに委ねて流されるのではなく、自分で選んで、適切な関わり方ができるか、だー

 俺は大学2年生のリクト。地方から上京し、最初は一人暮らしをしていたが、孤独感や家賃の問題もあり、同じように上京してきた同級生4人と今年からシェアハウスを始めた。大学に入る前は、大学はユートピアのイメージしか無くて、毎日新鮮なものに囲まれ、楽しくて仕方のないものだと思っていた。でも実際は課題は提出期限間近ギリギリになってから慌てて取り組み、暇な時間はなんとなくスマホでXやショート動画をスクロールしながら時間を消費して過ごす。そんな自堕落な日々もあっけなく過ぎ、気づくともう夏手前だった。テストも今日で終わり、シェアハウスの友達とくだらない事を話しながら帰っている途中、偶然駅の手前にある時計の形のマンホールに金色の紙が落ちている事に気づいた。拾ってみると、何やら案内切符らしく『リミテッド線ヘようこそ、』とくっきりとした文字で書かれていた。気になった俺らは、すかさずそれを拾い、家に持ち帰った。その日の夜。24時にはいつも寝たいのに結局ネットサーフィンで深夜過ぎても寝ていない俺の視界に、窓から一筋の光が現れた。眩しくして目を開けたまま見つめているとその光は徐々に形を帯びながら家に近づいてきて、ゴゴゴっという音を立てて家の前で止まった。どうやらなんかの乗り物のようだ。俺らは気になって外に出ると、そこには今日の昼のマンホールの形と同じ時計のイラストが刻まれた汽車が止まっており、間もなく扉が開いた。目の前で起こっている事に圧倒されながらも、何かに誘き寄せられているかのように自然と俺らは中へと入っていった。車内は一見普通の車両と変わらぬ光景が広がっていた。だが、ドアがスッと閉まると同時に列車は動き出し、徐々にタイヤの回転速度を上げ、列車のスピードを上げていった。気づくと渦巻のような不思議な空間にに突入していた。目が回り、気持ちが悪くなった俺は思わず目をつぶった。するとその瞬間、今日スマホで検索していた情報がまるで走馬灯のように頭に駆け巡り出した。さらに気持ちが悪くなり、吐きそうになったが必死に耐えていると徐々に頭の中の情報の渦がゆっくりになり、消えていくのを感じた。やがて列車は速度を落とし、無事どこかの駅に到着した。扉が開き、俺たちは恐る恐る外へと足を踏み出した。
 
 するとそこには今まで見たことのない世界が広がっていた。一面には満面の星がに広がり、周囲には大自然が息づいている。耳を澄ますと虫の鳴いている声や海の水しぶきの音が心地よく響いていた。少し歩くと小さな街のような場所に到着した。街の中には、歌を大声で歌う人、トランペットを吹く人、分厚い辞書のような本を熱心に読む子供たち、、。皆、何も気にせずとにかく今を楽しんでいるように見えた。歩いていると、髭をボウボウに蓄えたおじいさんに、どこからきたのかね?と興味深そうに尋ねられたので、切符のことや電車について説明した。すると、かなり驚いた表情を一瞬したかと思うとまたいつもの朗らかな顔に戻り、寒いから入り、と近くにある自宅に案内してくれた。家には6人の孫がおり、トランプやカードゲームなどをして遊んでいた。おじいさんは是非ゆっくりしていってくれ、と言葉を放ち、俺らはその言葉に甘える事にした。おじいさんが用意してくれた部屋のベッドで横になりながらスマホをいじろうとしたが、電波が届いていない事に気づいた。しかしそんな事に動揺している暇もないほど疲れていたのか、直ぐに深い眠りについていた。翌日から俺らは子供たちに混ざってババ抜きやすごろくをして遊んだ。こんなに腹の底から楽しむのは何年ぶりだろうか、、。街に出ると、今まで見たことのないもので満ち溢れていた。ぐにゃぐにゃと変な形をした博物館、虹色の水の噴水、色を点滅させる橋…。どれも初めて見るものばかりでそれに俺らはくぎ付けになった。しかし一つ疑問に思うことがあった。ここに来てから時計を一度も見たことがない。しかもいつ外に出ても空は満面の星が広がっており、太陽が現れる気配がない。時間に追われる日々を過ごしていた俺らにとってそれはかなり違和感があった。それでもここから出たくないという思いが強く、違和感を隠したまま毎日過ごした。そんなある日。いつものように奇妙な街を歩いているとアクリル板のような、透明だけど硬いものにぶつかった。その板はそこを境に真っ直ぐに伸びており、それ以上進めないようだ。どうやらここがこの街の終着点のようらしい。この斬新な世界をもっと見たいと思ったのに、、。俺らは少しがっかりした。次の日も次の日も子供たちと遊んでは街に出て不思議な街を観て過ごした。しかし、ある日を境に前も見たことがあるようなものが増え、街の散策も次第に飽きてきてしまった。そんな少し落胆していた俺らに拍車をかけるように、ある日おじいさんはゾッとするような言葉を発する。『この世界は時間も情報も有限なんじゃ。ここに住んでいる人は前に生きていた世界の情報の多さや時間に追われる日々に疲れて移住してきたものなんだよ。これ以上苦しまなくて済む。』
それを聞いた俺らはぞっとした。
 その日の夜。いつものように寝ようとしていると同級生の一人がうめき声をあげていた。どうやら悪夢にでもうなされているらしい。次の日、街に出て俺らは話し合った。元居た世界に帰りたい、、。でもどうすれば、、。すると一粒の雫が頭にふってきた。雨の量はどんどん増していき、気づくと大雨になっていた。でもその雨すらも気持ちよく感じた。この数日繰り返される景色に飽き飽きしていた俺らにとっては非常に新鮮な現象だった。感心しているのも束の間。空からまぶしい光が俺らめがけて降ってきた。まぶしさに耐えきれず目を瞑り、暫くして再び目を開けるとそこには来た時と同じ汽車が目の前に止まっていた。ドアが開くと、俺らは何も言わずに中に入った。扉は閉まり、ものすごい勢いで出発した。目を瞑るとまた頭の中に走馬灯が流れ出した。でも今回は行きの時とは違い、この町で過ごしたかけがえのない日々が穏やかに、ゆっくりと頭を駆け巡った。
ーピピピピ。
 アラームの音と共に目覚めた。そこはいつものシェアハウスのベッドの中だった。他に誰かいないか確認する。すると皆も同じように目を覚ました瞬間だった。昨日あった出来事について確認する。すると皆同じ体験をしていたらしく、虫唾が走った。これは誰にも言わない、5人だけの秘密にしておくことにした。
 
今日から夏休み。
いつもならスマホで半日過ごしてしまう俺も、今日は体が落ち着かず外に出た。歩いていると木の上でセミがジリジリと大声で鳴いている。その奥ではひまわりが太陽をめがけて力いっぱい咲いていた。今年は高校生と違い、夏休みの宿題がない。午後から始まる居酒屋のバイトまで少し時間がある。夏休みの計画を立てようと思い、家に戻ってスマホで検索した。
今年は毎年恒例の花火大会に、追加でドローンと最先端技術を使ったマッピングが行われるらしい。シェアハウスの4人を誘って席の予約をする。
予約が完了し、いつもの癖でYouTubeを開き、「花火 ショート」と打ちかけたが、ふと手を止め、スマホを置いた。

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