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ミロク
東郷家は紛れもなく日本屈指の旧家。何代にもわたって社会の表舞台に立ってきた家系だ。だけど、そんな彼らが「秘密」と呼ぶものは決して少なくない。僕はある事情で、その家に仕えることになった。僕は執事――簡単に言えば、東郷家の世話係。けれど、その役割は想像以上に重くて、深い。
「八島君、そろそろ出ていこうか」
東郷家の若き当主、東郷平八郎の声がリビングの重厚な扉の向こうから聞こえる。彼は僕よりも年上で、名門の長男にふさわしい凛とした佇まいをしているのに、どこか人懐っこい笑顔を見せるのが不思議だ。彼との出会いは、僕の運命を大きく変えた出来事でもある。
僕が東郷家に来たのは三年前。まだ高校も卒業していなかった頃、不遇な事情で居場所を失った僕を、東郷家の執事長が拾ってくれたのだ。彼は言った。
「八島君。君には、君だけにしか背負えないものがある。それを知ってもらいたい」
何度も繰り返されたその言葉は、僕の心に灯りを灯した。けれど、その灯りは簡単に明るくはならなかった。僕は自分が転生者だと知っている。別の世界からこの世界に来て、前の記憶はいずれ薄れていくと予想しながらも、“さよなら”の意味をまだ理解できずにいたのだ。
東郷家は、僕には特別な意味がある。執事としての立場だけじゃない。彼らは僕の秘密を守り、僕の存在を肯定してくれる唯一の場所。
それに、平八郎もまた、秘密を持っている。眼の奥に見え隠れする影を僕は見逃さなかった。
「ねぇ、八島。君はさよならを知ってるかい?」
平八郎がある日、ぽつりと口にした。彼の声は強く、だけどどこか遠くを見つめていて、まるで僕に試すようだった。
「さよなら? それって……別れのことですよね」
「僕たちはいつか、必ずお互いにさよならを言わなければならない。でも、その瞬間までに、一緒にいられる時間を作ることが大切なんだ」
彼の言葉にぼんやりと理解が広がった。そう、僕らの時間は永遠じゃない。特に僕は、この世界にいる時間が限られている転生者だから。
日々の仕事は執事として多忙だ。しかし、東郷家の日常には、少しずつ心の温もりが混じっている。
「落ち着け、八島」
平八郎が、ときに僕の肩をそっと叩いてくれる。その時の彼の手のぬくもりに、僕は胸が締めつけられる気がした。
「君がここにいるだけで、僕は救われているんだ」
平八郎がそう告げたのは、ある春の夜。桜の花びらが静かに舞う庭の下、僕たちは二人きりだった。
僕は内心、恐れていた。本当のことを話したら、彼は僕を拒絶し、そして永遠のさよならを告げなければならないのではないかと。でも、彼の前では嘘をつけなかった。
「僕は、前の世界から来たんだ。転生者だってことを知っている。でも、ここで生きていきたい」
息苦しさが少しだけ和らぐ。彼は黙って僕の手を握り返してくれた。
時折、僕の秘密を知る東郷家の使用人たちが、奇妙な目でこちらを見ていることに気づく。だけど、誰も何も言わない。それどころか、僕に笑顔を向けてくれるのだ。家族のように。
「僕たちは八島君のすべてを受け入れる」
執事長の言葉が胸に響く。この家は、僕だけの特別な場所。たとえどんな過去や秘密を抱えていても、ここにいる限り、きっと幸せになれる。
春が巡り、新たな季節を迎えた頃、僕はある決心をした。
「平八郎、君に本当の僕を知ってほしい」
彼は軽く頷き、優しくほほ笑んだ。
「怖がらなくていい。君は君だ。それだけで十分だよ」
そして僕らはまた今日も、東郷家の静かな館の中を共に歩く。何度でも分かち合う秘密、そしてそれを包み込む優しさと温もりが、僕の心を溶かしていった。
僕はここで、新しい“さよならの意味”を探していく。
別れがあっても、また会える。そんな未来を信じながら。
#ss
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現時点で体重-5kg、体脂肪-2.5%。
胸とお尻のサイズダウン、一切なし。
この1ヶ月半、お米は毎日しっかりと摂取し
肉も寿司も麺類もわりと頻繁に食べ、
やる気ゼロ日はUberも出前館も超大活用。
ちなみに写真の肉は6日前の夕食。
(これにガーリックトースト2枚プラス)
お弁当は3日前のお昼のもの。
勿論、全部完食✌🏻
でもちゃんと体重はじわじわ減っていく。
好きなもの食べて、たかが1ヶ月半で5kgも。
マンジャロを使って体調を崩してまで
体重を落とそうとしなくても、
こうしてストレスフリーで落とせる事。
今後も私の身体で証明していきたい。



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