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ミロク

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ギムレットの花と散りゆく愛

「花になる病」――それは、心の底にある深い想いを抑えきれなくなった者が発症し、やがてその身体が花びらへと変わり、空へと散っていくという不思議な病である。

ギムレット。屈強な白人の男。白い髪、白い瞳。縦線模様のチューブトップワンピースをまとい、胸元の太線だけが無地。今日も彼は孤独に空を滑空していた。

朝の白銀荘上空。ギムレットは風を切りながら歌を口ずさむ。低く澄んだ声が霧に溶け、歌詞は銀血の誇りと自由への憧れを綴っている。「風が気持ちいい……」と微笑み、白い髪が風に揺れる。白い瞳が陽光を映し、グラファイトの壁の上に軽やかに着地した彼は、膝を抱えて一息ついた。眼下に広がる白銀荘の街並みを見つめ、胸の奥に微かな疼きを覚える。

「ここじゃ……僕は誰にも見えない」

呟くように言い残し、再び翼のように腕を伸ばして舞い上がる。住民の視線を避けるように霧の中を抜け、銀警察署の上空へと滑り込む。だが、ふと動きを止めた。訓練施設の広場に視線を落としたそのとき――。

ギムレットは壁の上に腰を下ろし、息を整える。下では銀警官たちが白金の武器を手に訓練中だった。武器の唸りと標的の砕ける音。その中に、一際目を引く男がいた。

サキマ。屈強な白人の警官。白い髪と白い瞳を持ち、銀の制服に包まれたその姿は、凛とした孤独を纏っている。滑らかな銃捌き。汗に濡れる髪。鋭く澄んだ視線。そのすべてが、ギムレットの心を射抜いた。

――誰だ、あいつは。

胸が高鳴る。初めての感情だった。話しかけたい。名を知りたい。だが、銀血の誇りと、胸の奥に潜む病の予感がそれを許さない。唇が震え、「……あ……」とこぼした瞬間、彼は壁から飛び立った。

だが、その時だった。胸を鋭い痛みが貫く。足先に白い花びらが咲き始め、静かに舞い落ちた。

ギムレットは再び歌を放つ。声は震え、風とともに空へと溶けていく。白銀荘の上空を抜け、大気圏に向かって駆け上がる。足先から、やがて膝へ、腕へ、肩へ――花びらは身体を侵食していった。

「君の名を……知りたかった……」

抑えきれぬ想いが、病を加速させる。白い瞳が涙に滲み、サキマの姿を心に焼き付ける。空気が薄れ、世界が霞む中、彼の歌声は最高潮に達した。

「愛――ッ!!!」

その最後の叫びとともに、ギムレットの身体は完全に花びらと化し、大気の中へと散り去った。陽光を浴びて白く輝く花びらは、霧の深い白銀荘の空へと溶け込み、やがて消えた。

その頃、銀警察署の訓練広場では、サキマが銃の手入れをしていた。ふと空を仰ぐと、一枚の白い花びらが風に乗って落ちてくる。

「……何だ、これ?」

かすかに呟き、首を傾げる。誰のものとも知らぬ花びらが、彼の足元に静かに触れた。
ギムレットの想いは届かず、白銀荘の壁だけが冷たく輝き続けていた。
その歌の残響は、誰の耳にも届かぬまま、空へと消えた。
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