好きな人がいることは、とても素晴らしい事。｜すずめの投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

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すずめ

2025/10/08

好きな人がいることは、とても素晴らしい事。
その人が例えもう気持ちが無くとも、会えなくとも、交わる事がなくとも。
その人を愛するということは可能で、その人をお守りのように思う事は自由。

先日、奇妙な体験をした。
仕事帰り、喫煙所に立ち寄った時のこと。
時刻は深夜にさしかかるような時間。都会より早い終電に乗って帰宅した時だった。
自宅は換気扇の下以外は禁煙、基本あまり吸わないようにしているので、自宅に向かう前に一服をするのが私の日課。
その日もそんな習慣をしにコンビニの喫煙所に立ち寄る。
音楽を聴いていた。私が少女の頃のミクスチャー系の音楽。
本業とは別の、接客業の疲れを洗い流すのにはちょうどいい、クラブミュージックとパンクの融合。
耳が音に満ちている私に、少年のような男性が声をかけてきた。
おおかたタバコの火を貸してほしいとか、アイコスの本体を貸して欲しいとか、タバコが欲しいとかそういうものだろうと思って無視を決め込んだのだが、あまりにも熱心に話しかけているのが可哀想でイヤホンを外すと、終電の話をしていた。
終電を逃したのか？と思いつつ、目的がわからないその人と世間話をするうちに、近くで少し飲む段取りになった。
少年は失恋したばかりで人に話したいのだそうだ。

仕事以外で人と話す機会がほとんどないのもあり、軽く飲む事となったのだが、店はもう閉店時間も迫っている。
それならば、と自宅に来させる事にした。
嫌な気は持たない雰囲気の子だったのだ。
何より、地元の人なので大事を起こす心配がない。ご近所でトラブルを起こす事が、社会的にも生きていけないほどにはご近所付き合いや交流がある土地なのだ。
とりあえずコンビニで飲み物を買い、自宅に向かうみちすがら、恋愛の話をしていた。
別れた理由、別れた後の感情。
部屋についてもそんな話ばかり。
私が帰ってからの習慣をしてやっと腰を据えた時には買ってきた酒を早々に飲み切り、本題を切り出してきた。
泊めて欲しい、出来れば身体を貸して欲しい。
一瞬訳がわからなくて、きょとんとしてしまったが、すぐに笑いが込み上げてきた。
そんなバカな事するなら家に帰りなさいと。
普通そこで諦めて帰ると思うのだが、彼は諦めなかった。よっぽど自分に自信があるのだろう。
私がいわゆるおばさんだから、断る事はないだろうと踏んでいるのだろう。
だから、私はムダ打ちをするもんじゃない、自分を安売りしないでちょうだい。私もムダ打ちしたくないわ？と断り続けた。
別れているのになぜ？を繰り返すその人に私は私の愛する人の事を話した。
その人に失礼でしょう、あなたも。私も。別れたからといって、その人に対する心持ちは変わらない。

そう話すと諦めてくれたようだった。
代わりに、なぜ別れたのか、別れた後に縋らないのかを問われた。
ありのままを答えた。
あの人が望まない事をできない事、あの人の幸せを思うなら私が側にいてはいけない事、あの人が幸せになる道を歩いているならこれで良かったと思うほかない事。
その日はそのまま穏便に帰ってくれた。

翌日、気のおけない友人にその事を話していた。
成人しているとはいえ私の息子でもおかしくはない子にそんな事を求められた事が、おかしくて仕方なかった。
その話の流れで。あれだけ愛だ恋だと騒いで、ころっと誰かに抱かれたら。本人にも失礼だし、友人であるあなたに失礼極まりないわよね。そんな旨を話していた。
ほとんど全ての私の恋の話を知る友人は、もしもそんな事していたら叱ってたと言ってくれた。

普通なら、そんな男のこと忘れろとか、終わった事だと切り捨てるはずなのに、まるでまだそばにいるかのように言ってくれるのが、私の友人なのだ。
私が生半可な気持ちで好きとか愛してるとか口にしない事を、100まで言わなくてもなこの友人はわかってくれている。
まだ好きで、愛している事を笑ったり蔑んだりもしない友人。

そういえば、母にも臆せずその人への気持ちを話せるようになった。

私の周りの外堀は、別れてから関係や私の気持ちをオープンにした分、拒絶され続けた私の恋愛対象のその人を受け入れるスペースを作ってくれたように感じる。
あるがまま、今ここ、を私が直視して。揺らぐ心と行動が統一されつつあるから。なのかなと思う。

あの少年は、私に"今ここ"を見せるために現れたのかしら？
私の心、見えたわ。ありがとう。

やっぱり私はあの人を愛してます。
あの人が必要よ、愛しているから。
あの人が幸せに過ごしてくれたら、私の愛は報われる。
あの人が悲しく沈んでいたら、それで私のところに帰ってきてしまったら、毛布に包んであげましょうね。

それでいいじゃない？
どっちに転んでも、私の心は揺るがないわ。

あの子も、もう少しいろんな種類の愛を知ったら。この気持ちもわかるようになるわ。
むしろ、たくさん傷ついて、たくさんの輝けるような恋をしなさいな。