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ハサン

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私と友達になってくれませんか?

そう口にした瞬間、彼女は大きく目を見開き、驚きに満ちた表情で私を見つめた。見知らぬ男が突然こんな言葉を投げかけてきたのだから、彼女にとっては不自然で、むしろ迷惑にすら思えただろう。怒りをあらわにしても当然のはずだった。

それなのに、不思議と私はその怒った顔さえも美しいと思った。まるで怒りが、彼女に備わったもう一つの魅力であるかのように。


女性は本当に不思議な存在だ。

怒っても、美しい。

拗ねても、もっと美しい。


優しさを見せれば、心が包まれ、

愛情を注げば、世界が柔らかくなる。


笑えば光が広がり、

泣いても、その涙にさえ美しさが宿る。


叱っても愛しく、

愛せばなおさら美しい。


おしゃれをすれば輝き、

おしゃれをしなくても、むしろもっと輝く。


女性のすべて――感情も、仕草も、声も――

そこにはいつも美しさが溢れている。


女性とはまるで歩く詩。

読み進めても、決して終わることのない詩なのだ。


けれども、私は知っていた。日本では人と人との関係は、そんな唐突な言葉から始まるものではないことを。ここでは一緒に歩き、語り合い、時間を重ねてこそ関係が育っていく。ある日、同僚に尋ねてみたことがある。

もし、まったく知らない女性に突然"友達になってくれませんか?と言ったら、どうなるんですか?

彼は笑いながら答えた。

日本では誰もそんなことは言わないよ。関係は言葉で作るものじゃない。二十歳未満の子に言ったら、警察を呼ばれるかもしれないよ。二十歳を過ぎていれば、まあ言うこともできるけど気をつけなきゃ。あなたは外国人だから、大きな問題にはならないかもしれないけどね。


仕事へ向かう道すがら、私はよく一人の女性を見かける。ある店の窓際に座り、パソコンに向かっている彼女だ。ときどき目が合うと、彼女は軽く頭を下げて挨拶してくれる。日本人の礼儀はそういうものだ。知っていようがいまいが、誰にでも挨拶をする。

彼女は私と同じくらいの年に見える。いつも眼鏡をかけていて、その眼鏡がまた不思議なくらい彼女を美しく見せていた。


ここに来てから、私は友達を一人も作れていない。同年代の友達はもちろん、職場でも地元のスタッフはごくわずかだ。孤独は日に日に重くなり、今やほとんど耐えられないほどだ。だからこそ思う——ただ一人でも友達が欲しい。少しの時間を分かち合い、ほんのささやかな会話を交わせる人が。

友達というものは、大したことではないのかもしれない。

けれども、人生が孤独に包まれたとき、友達こそが最も貴重な拠り所になる。


あの日、私は勇気を振り絞って言った。あなたは、私と友達になってくれませんか?

彼女は息を呑み、ただ目を大きく見開いて私を見つめた。不意の言葉に動揺し、頬を紅潮させて怒りをあらわにするのは当然のことだった。私は不安に駆られ、無意識のうちに後ずさりし、逃げるように仕事へと向かった。


翌日、彼女は店のそばに立っていた。私は思わず、別の道を通ろうかと迷った。心の奥に恐れが残っていたからだ。再び何か言われるのではないかと。そんな逡巡の中、彼女は手を振り、私を呼んだ。

そこのあなた、ちょっと来て。

私はおそるおそる近づいた。

名前は?

彼女の声は鋭かった。私は答えた。

"ハサン"

みんなそう呼びます。

彼女は次々と質問を投げかけてきた——何をしているのか、どこに住んでいるのか、どこの国の人なのか。私は一つひとつ素直に答えていった。こちらからも名前を尋ねたい気持ちはあったし、美しさを言葉にしたい衝動もあったが、勇気が出なかった。


そのとき気づいた。日本人はやりすぎを好まない。褒めすぎ、干渉しすぎ、ロマンチックすぎ——それらは居心地の悪さを生む。過去の経験でも、褒めすぎて逆に気まずくなったことがある。写真を撮ることも少なく、他人に渡すのはなおさら嫌う。だから私は褒めることを控えるようになっていた。


それ以来、一週間ほど私は別の道を通って仕事に行った。あの日の記憶が怖くて、彼女の前を通る勇気がなかったのだ。

だが今朝、彼女が私のレストランの前に立っていた。店はまだ開いていなかった。彼女の姿を見た瞬間、胸は不安でいっぱいになった。


どうしたんですか?と私は恐る恐る尋ねた。

彼女は笑みを浮かべて言った。ハサン、一週間も会えなくて心配したの。病気なのか、それとも士別を離れたのかって思ったわ。その声は明るく弾んでいた。自分の名前を呼ぶその響きが、私をひどく嬉しい気持ちにさせた。彼女は私の名前を覚えていてくれたのだ。わざわざレストランまで来てくれたのは、きっと会えなかった寂しさのせいだろう。


私は言った。いいえ、そんなことはありません。ただ道を変えただけです。

どうして?と彼女は首をかしげる。

私は微笑んで答えた。道を変えれば、誰にも迷惑をかけずに済むと思ったから。(本当は恐怖心からだったのに、それは言えなかった。)


彼女はまた微笑み、全然そんなことないわ。前と同じ道を通っていいのよ。何の問題もないから。と告げた。


帰ろうとする彼女に、私は胸の奥から湧き上がる勇気を押し出した。

"もしよければ……お名前を教えていただけますか?"

彼女は一瞬迷い、そして言った。

"みさき"


その名を聞いた瞬間、私はただ彼女を見つめるしかなかった。——みさき。その名前は、彼女自身のように柔らかく、美しかった。名前を知るだけで、心は温もりで満たされた。

彼女は去っていき、私はそこに立ち尽くした。考えながら——このみさきという女性と、いつか友達になれるのだろうか。可能性はあるかもしれないし、ないかもしれない。だが今は、一つの名前、一つの記憶、そして小さなときめきがある。それが、何かの始まりになるのかもしれない。


"みさき――可能性という名前"

---ハサン
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