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おじさん
満員電車に揺られながら、私は今日もまた、隣の席に座る男の奇行を観察していた。男は40代くらいだろうか、くたびれたスーツを着て、手にはビニール袋。その中には、なぜかピーマンがぎっしり詰まっている。
男は時折、そのピーマンを取り出しては、窓の外に向かって深々と頭を下げ、また袋に戻す。「どうも!今日もピーマン、お元気でいらっしゃいますか!」男は小さな声でつぶやいているが、どうやら私には聞こえてしまっているようだ。私が思わず吹き出すと、男は「ああ、すいませんねえ、うちのピーマンが人見知りでして」と照れくさそうに笑う。周囲の乗客も、最初は奇妙なものを見るような目つきだったが、今ではすっかり慣れてしまったのか、誰も気にしない。
「ピーマンって、なんかこう、やたら元気で、愛嬌があるでしょう?」男はそう言って、ピーマンを私に見せつけてくる。たしかに、スーパーで売っているようなごく普通のピーマンだ。私は「はは、そうですね」と適当に相槌を打った。男は「いやー、いい天気だ。ピーマンも喜んでいる」と満足げにうなずく。私はもう、笑いをこらえるのに必死だった。こんな奇妙な男に遭遇するのも、都会の満員電車ならではの光景だろう。私はスマホで男の写真を撮ろうか、いや、やめておこうか、そんなことを考えながら、ぼんやりと窓の外を見ていた。
次の駅で、男は降りていった。「では!ピーマン共々、またお会いしましょう!」男はそう言い残し、人ごみに消えていく。私は拍子抜けしながら、再びスマホをいじり始めた。ふと足元を見ると、一つだけ、床に転がっているピーマンがあった。男のものだろうか。拾ってやろうかと思ったが、もう次の駅のアナウンスが流れている。まあ、いいか。そう思って、私はそのままにした。
その瞬間、電車が急停車した。アナウンスが響くが、誰も微動だにしない。おかしいな、と思い、顔を上げると、乗客たちの様子がいつもと違うことに気づいた。彼らは皆、床に転がったピーマンをじっと見つめている。その目には、狂気的な光が宿っている。「ピーマン……」「ピーマン……」彼らは口々にそうつぶやきながら、私に近づいてきた。その手には、どこから取り出したのか、まるで呪物のようなピーマンが握られている。
私は恐怖で体が動かなくなった。逃げなければ。そう思うのに、足がすくんで動かない。「ああ、お客さん、ピーマンがお呼びです」誰かが私の耳元で囁く。背後を振り返ると、そこには、先ほど降りていったはずの、あの男が立っていた。男の手には、やはりピーマン。しかし、そのピーマンは、先ほどのものとは違っていた。ねっとりと、黒い液体を滴らせ、まるで生きているかのように脈打っている。そのピーマンから伸びた細い蔓が、私の首に巻きつき、徐々に力を込めてくる。
私はもがき、苦しみながら、男の顔を見た。男は、狂気を帯びた目で、満足げに笑っている。そして、その口元には、先ほどまで「愛嬌がある」と語っていた、あのピーマンが挟まっていた。「ピーマンは、人間がお好きでしてねえ」
窓の外には、今日もまた、太陽が輝いている。だが、もう私は、この電車から降りることはできない。このまま、永遠に、満員電車に揺られるのだろう。今日もまた、どこかで誰かが、電車に揺られながら、奇妙な男とピーマンに出会う。そして、彼もまた、私と同じように、ピーマンの呪縛から逃れることができなくなるのだ。
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ザンバ

ヒル⚓
すごく品と質が良くて個展の雰囲気が✨
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つんつ

しょう

明太ツ
#サンシャイン

ぐんか
今年はどの球団が誰を指名するのでしょうか
ところで今年の注目選手はどなたですか?

泉海 ア

たいす
あとランクマはAランクになったらガチの虚無対戦になるから報酬美味しくしてね

∠ニイ
淳太くん見れるーーー!!!
#DayDay
#中間淳太

みー太
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