普段は装置周回が源岩と一緒に来てあんまり集まんなかったから今回美味しすぎるな

特養で働いていた時にAさんという、認知症があるが穏やかな人がいた。
Aさんの家は貧しく親が決めた「安定している仕事をしていて、お国の為に働いている人」と、お見合いで結婚したそうだ。

ご主人さんは口数は少ないが優しい人で、たまに
「今日のご飯は美味しかった」
と褒めてくれるのがたまらなく嬉しかったそうだ。
嫁姑問題もなく穏やかで幸せな日々が続いていたが、時代がそのささやかな幸せが続くのを許さなかった。
「お国の為に働いている人」
ご主人さんは軍人だった。

出兵前にAさんが妊娠していることが分かったそうだ。
無口なご主人さんが
「絶対に帰ってきて子供を抱く。それまで苦労をかけるが両親のこと家のこと、子供のことを頼む。」
と言って戦地に赴いたそうだ。

ご主人さんは小さな箱に入って帰ってきた。
中には石しか入っていなかったと聞いた。

それからAさんは大変な苦労をしたそうだ。
戦争中、ろくな食べ物もない中で子供を育てたのだから。
Aさんのような人は周りにたくさんいた、とも聞いた。

Aさんは再婚をしなかった。

この話はAさんの娘さんから聞いた話だ。

離れているが娘を持つ者として、生まれてくる子供を見ることも抱くことも出来ずに亡くなったのは、いくら時代やお国のためとはいえ無念であったと思う。
そのことやご主人さんの帰りを待ち、ささやかな幸せを望んでいたAさんの気持ちを考えると私まで苦しくなる。

重度の認知症があり、言葉を発することがなかったか、時折寂しそうな表情をしていたのが印象的な人だった。
ご主人さんのことを思っていたのかな？
と勝手に思っていた。

Aさんと言葉を交わすことは殆ど出来ませんでしたが、あなたから多くのことを学びました。

ご主人さん、あなた達のお陰で私も私の大切な人達も食べるものに困らず、平穏な日々を過ごすことができています。

Aさん、天国で無口なご主人さんと穏やかに過していますか？

#終戦記念日