幻塔に課金しなくなったらちょっと生活に余裕出て来たよ

【横柄くんの一発芸】

※これは過去の婚活をまとめた「まる婚活」シリーズの続きになります。過去投稿はフォロー→#まる婚活からご覧ください※

その日は仕事が忙しかった。
…とは言っても、休日出勤していたわけではなく、持ち帰った仕事に追われていた。

『ち、遅刻する！』
あわあわと手を動かし、ドタバタと小走りで待ち合わせ場所に行った。
化粧も綺麗に出来ていたかすらわからない。

レストランの前でお見合い相手の男性と流れるように挨拶を交わし、流れるように店内へ行き、流れるように席に着く。

今日の男性は大柄な人であった。
「わはは！！」と大きな声で笑う、豪快な仕草が特徴的であった。
いつも通りのカラ元気で乗り切り、コーヒーに手を伸ばす。

でも気持ちは未だに焦ったまま。
『そうですね』などと、相槌を打ちながら、心の中はヒィヒィと息切れをしている。

だから、そう。

その、

私、こぼしちゃったのである。

砂糖を。

『ｱｧ…』

ﾊﾟﾗﾊﾟﾗﾊﾟﾗ～…

張り詰めた緊張がふにゃふにゃと緩む。

ばか。
あたしのばかぁ。

焦りで手元が狂って、砂糖が机に広がってしまうのであった。
黒い机に白い粒がパラパラと散りばめられていく。

目の前の男性は「あ～らら」と、呆れたような、笑うようなしぐさをしてみせる。
どうしようもないなって視線が言っている。

ごめんなさい…　ごめんなさい…
私の元気がしおしおとしぼんでいく。

すると男性は私がこぼした砂糖に手を伸ばす。

両手で砂糖を集めて、小さい山を作る。
三角の、富士山のような綺麗な小山。

私のこぼした砂糖を集めてくれたの？
ごめんね、ありが・・・

「ﾃﾚﾚﾚｯﾃﾚ～♪
　盛り塩～～～～～～！！！！！」

『・・・』

笑えば…いいのか…？

「って、塩じゃなくて砂糖やないかーい！！」

展開される一人乗りツッコミ。

何も言えずただ硬直しているだけの私。
コミュ力の低い女はこういう時にどうしたらいいのか分からない。

すると男性は砂糖を指さしてニッコリと笑いかける。

「こんなもん、俺たちが焦らなくても店員がなんとかするから大丈夫。
　それとも気になるなら今すぐ店員を来させようか？
　片付けさせるよ」

これだけは分かる。

店員に横柄な男は『無し』だわ。