2次元ヒロインに胸がキュンキュンしてもリアコにならないのは礼儀ね

ドライブをしている。
眠れない夜の趣味である。

ここは【開かれた田舎】
自然豊かな田んぼ路にも
煌々と光るネオン街にも行ける。

いつかのリモート呑みで余ったお酒を
消費して過ごしても良かったのだけれど
アルコールの力を借りて
気持ちよく寝てしまうのは違う気がして。

今夜は都会に向かって走る。
好きなアーティストのLIVE DVD1枚分走る。

あと1時間７分。

誰かの寝息が隣りで聞こえる夜は
とても健やかでとても幸せなのだ。
と同時に
しん、としたヒトリの夜がくるのが
恐ろしくて
膝を折り曲げてお腹にくっつけて
小さく小さくなって眠る。
期待して失うのが怖いのだ。
嗚呼またかと突きつけられるのが恐ろしいのだ。
そうなるかもわからないのに。
網のように張った過去にとらわれている。

今夜はそんな夜になってしまいそうで
ギラギラビカビカした街に向かって
LIVE DVDの音に合わせて
ヘッドバンキングしながら突っ込んで行きたくなったのだ。

あと39分。

一昨年の私が持っていたものを
去年の私が失って
去年の私が欲しかったものを
今年の私が見つけて

あと５分。

薄曇りの中に月
雲が細く流れて
空には数種類の黒。

あと２分。

こうして今日私はひとつ歳を取る。

失ったり捨てたり拾ったり立て直したり
壊したり暖めたりしながら
プラスマイナスゼロ…いや少しプラスで
今日を迎えることが出来てとても幸せなのだ。

大切なものや人や時間や好きとか嫌いが
目まぐるしく移り変わっても
誰かが一緒にいてくれる時間を受け取る勇気と
寂しさを乗り越える術を手に入れた私が

今の私が人生の中で1番好きな私かもしれない。

今、隣にいてくれる誰かに感謝して
ありがたく手をとって
寄りかかることが悪いことじゃ無いと
素直になることが出来て
いつか来る独りに備えられる私になれるよう
私は今日ひとつ歳を取る。

誕生日おめでとう、私。