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おっち
路地裏の商店である商品を見つけた。
それは『フラゲ桜』とプレートが掛けられた一本の枝だ。
その枝は細く、ざらざらした樹皮は赤みがかった褐色をしている。ところどころ薄い横向きの筋が入っていた。
節をみると、小さな蕾がひとつ、ピンク色の花弁をわずかに覗かせていた。
「水をあげると一足早く桜が咲く、そんな不思議な逸品だよ」
という店主の説明を受けて、僕は『フラゲ桜』の購入を決めた。
店主は『フラゲ桜』の細い枝を新聞紙で包んでくれた。
僕は代金を支払い、その足で病院に向かった。
「桜が見たい、って言ってただろ」
病室に入ると、さっそく『フラゲ桜』を花瓶に挿した。
「また、そんな訳のわからないもの買ってきて」
ベッドに横たわる母親は、小さな声で呟いた。
呆れた顔をしていたかもしれない。嬉しそうな顔をしていたかもしれない。
僕は、隣にいるはずの母親の顔を直視できなかった。
「次の春を迎えるのは難しい」と、医者からそう聞かされていた。
横目にみた母の顔色は、先週よりも悪くなっているように思えた。
「きっと、今年の桜も見られるよ」
窓際に置いた桜の枝を見ながら、僕は呟いた。
それは自分に言い聞かせる慰めだったのかもしれない。
それから間もなくして、母は旅立った。
最期の顔が穏やかだったのは、せめてもの救いだった。
母親が去ったあと、病室の片付けをしていると、桜の枝が挿さった花瓶が目に入った。
窓際に置かれた花瓶の真下に、ひとひら、桃色の花弁が落ちていた。
まだ冷たい冬の陽光に照らされたそれは、季節外れの桜の花弁だった。
「咲いてくれたのか……ありがとう」
春の訪れを待たずにやって来てくれた、その桜に、僕は感謝の言葉を述べた。
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