：孤島洋館ミステリーツアー！怪しい富豪の館で起こる怪奇現象!?

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さまようもの

2023/11/11

嫌な予感はしていた。
孤島、洋館、謎の金持ち。
そんな怪しい、怪しすぎる、怪しいを通り越しておかしい三段活用の場所にロケである。
『自分だけの島でバカンスを過ごす金持ちは本当にいた！？』
タイトルからしてそんなわけない。
企画書も薄っぺらい上にポ○ンと一軒家を丸パクりしたような内容だったが、ギャラはかなり良かったし何よりマネージャーの目が絶対断るなよの光を放っていた。

まぁええわ、これも仕事。金のためなら孤島にも行ったるわ。

あの時の俺を殴りたい。アホ面さげて「ええですよ、なんでも。オモロイやないですかこういうのも。金持ちはやる事が違いますねえ」
なーんて言ってしまった。

洋館のシンボルである時計台の先端に刺さる女性を見ながら、今更後悔している。

「またやってるやん」

こんなシチュエーション、あるわけ無いのだ。
またやられた。いや、分かってた。
どうせ『水曜』やろ。

「今日もしかして帰れないやつです？　やめて下さいよホンマもう良い加減にして下さいって。もうこんなん見てもこんなリアクションになっちゃいますって」

振り返りながらカメラマンに声をかける。
しかし馴染みの顔のカメラマンの髭面には俺が期待していたニヤつきは微塵も無かった。

「これ……は、台本に……ない……です……」

「は？」

髭面の顔は青ざめ、白い肌と黒い髭のコントラストが眩しい……ってそんなことを考えてる場合では無い。
俺は救いを求めて全員を見渡す。
だが、その場にいる誰もが状況を理解出来ていない様子で、時が経つほどにこれがただの演出などではなく『水曜』でも無いことが明確になっていく。

「ウソやろ？　おい、え、どういう……」

女性スタッフがようやく甲高い悲鳴を響かせる中、誰かに聞こえるでもない声が漏れ出た。

「どういうお笑い……？」

サングラスを頭に乗せ、ブルーハワイを片手にブーメランパンツを履きこなしながら、俺は静かに絶望した。

名探偵津田
シーズン3
乞うご期待(するな)