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わんわん

わんわん

『第10話』

残響が心地よくホールのあちこちに漂った。

やがて、夏希は手首を柔らかくピアノに押し付けるようにして、指を動かした。
のっぺりとした水面に波紋が広がるように、ショパンの「幻想即興曲」が始まった。

ピアノの音は、細かい雨のように繊細に降り注ぐ。そして雨は徐々に激しくなる。
急にやってくる、雷が滑り落ちるような運命的なメロディー。
そこを夏希は、叩きつけるように大胆に弾いた。

明人は思った。
(降り注いでいるのは雨なんかじゃない。きっと悲劇なんだ……)

曲は中盤の、詩情のある美しいメロディーに差し掛かった。
それは明人に、懐かしく輝かしい故郷を思わせた。
夏希は、手首で呼吸をするように、ゆっくりと音を紡いでいく。

明人がふと周りを見ると、ピアノを取り囲むように人が集まっていた。
老若男女が、うっとりとした表情で夏希の演奏に聴き入っていた。

明人は再び、夏希のピアノに集中する。
……幻想即興曲。
ショパンはこの曲を発表するつもりはなく、友人に「破棄してくれ」と託して亡くなったという。
そんな曲が、たまたま作曲家の目にとまり発表された。
そして今では、ショパンの数々の楽曲の中でも、知名度の高い曲として親しまれている。

曲は終盤に差し掛かった。
序盤の、悲劇が降り注ぐような激しいパッセージが再び奏でられる。
夏希は、右手と左手をわずかにずらして弾く。
序盤とは打って変わって力強く、運命的に。

明人は、今まで聴いた、どんな演奏からも感じたことのない感情に支配されていた。

それはただの悲劇ではない。
もっとひっ迫した、焦りにも似た感情だ。
やがて明人は思い至った。
夏希のピアノから放たれる感情。
それは「取り返しのつかない過ち」だ。

中盤の美しい故郷のメロディー。そこに、もう二度と戻ることができない過ちを犯してしまった。
その焦り、恐怖、後悔……。

明人は、ふと隣に立つ老婆を見た。
老婆は、シワに覆われた目から涙を流していた。

曲は最後に、再び故郷の余韻をのぞかせた。
そして周りの空気に溶け込むように、静かに終わりを迎えた。

パチパチパチパチ!!
割れんばかりの拍手が巻き起こった。
いつの間にか巨大な吹き抜けには、ショッピングモール中の人が集まったのではないかと思うほどの人だかりができていたのだった……。
GRAVITY

幻想即興曲

Frédéric Chopin,Balazs Szokolay

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コメント

りんりん

りんりん

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これドラマにしたら面白そう❣😊 TV局の人お願いします〜✨

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わんわん
わんわん
おもろいかなぁ〜? あ、TVの人、おなしゃーす!笑
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こむぎこっこ

こむぎこっこ

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読んでるだけで曲が聴こえてくるようです。 すご〜い[目がハート] さすがわんわんさん♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪

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わんわん
わんわん
そう言ってもらえると、嬉しい〜[笑う] 音楽を言葉で表すって難しいね! 聞けば済むことをわざわざ…、って感じで!笑
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mamy

mamy

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今後トカゲ🦎が何をしでかすのかが気になるゥ!!((⊂(;∩`ω´∩;)⊃))✨ あと、晴子www

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わんわん
わんわん
晴子ね!笑 ちょっと忘れかけてた!🤣💦
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