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わんわん
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『秋のカブトムシ』 第5話
明人は『貴方の彼女』とやらを置いといて、晩ごはんを作ることにした。
簡単な麻婆豆腐を作って食し、食器を洗ってしまうと、明人は手持ち無沙汰になった。
晴子の部屋にはテレビがない。
明人は、スマホで音楽のプレイリストを再生して、瞳を閉じた。
流れてきたのは、明人の好きなショパンの幻想即興曲だ。
本当に10本の指で弾いているのかと疑ってしまうような、行ったり来たりする速いパッセージ。
その中から姿を表す、人間の悲運を感じさせるような旋律。
やがてがらりと曲調は変わり、美しく詩的なメロディへ変わる。
明人はゆっくりと瞳を開いた。
視界に、くしゃくしゃに折り畳まれたビニールがある。
明人はそれを手に取ると、床に広げてみた。
大きさは、ちょうど人間一人分くらい。しかし、顔も髪も無い、ただののっぺらとした肌色のかたまりだった。
かろうじて、手足のような棒状のものが突き出ているのは判別できた。
そしてその先端に、空気を入れる弁がついていた。
明人は、なんとなく弁に口をつけ、息を吹き込んでみた。
ペリペリ、とビニールが剥がれる音がしたが、膨らんだ様子はなかった。
次に明人は大きく息を吸うと、思い切り息を吹き込んだ。
少しだけ、肌色のビニールが膨らんだ。
その後も明人は、ショパンを繰り返し聴きながら一心不乱に息を吹き込み続けた。
別に、この人形をどうにかしたい、という気持ちはない。
息を入れた以上、最後までやり切りたいと、意地になっていたにすぎなかった。
やがて、息がこれ以上入らなくなった。
その時、明人は異変を感じた。
息を吹き込むために顔の前で持っているビニールの感触と重さが、なんだかおかしい。
(これは、まるで……!?)
明人は口を離して、手に持っているものを確認した。
……それは、人間の足だった。
明人は、誰かの足の裏に口を付けているだ。
「……っ!!」
明人は、思わず手を離した。
ゴトリと重さをともなって、それはフローリングに落下した。
「ん、ん〜〜……」
聞いたことのない、女性の声がした。
落ちた左足から繋がる、太もも、尻、腰、胸、首、顔、髪……。
いつの間にか、全裸の女性が、フローリングに横たわって、すやすやと寝息をたてていたのだった……。

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もうね、わんわんワールド全開✨
mamy
つつついに(゚Д゚υ≡υ゚Д゚)明人が!! 未知との遭遇だァァァァァァ🥺✨ 🪐࿐✩.*˚
こむぎこっこ
この先 どんな展開が待ってるのか 楽しみ〜〜(≧∇≦)です。
リス🐿
自分の息で 出来上がる人間…さぁどうなるんだろ[穏やか]
ゆゆちゅ
えええぇぇ[びっくり]