オリンピックみたいww｜ゆのの投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

海辺の車中泊
久しぶりに、いや──今月もまた、車中泊の旅に出た。いつも相棒の犬飼を連れて。彼は年をとり、暑さに弱くなった老犬だ。だからこれまでの旅先は、標高の高い山の奥ばかり。昼も夜も涼しく、風が心地よく吹く場所を選んでいた。静かな森の中で過ごす時間は、それはそれで豊かだったけれど、どこか「避暑」という目的が先に立っていた。
けれどようやく、長かった夏の熱気がやわらぎはじめた。秋の風が少しずつ街にも山にも届くようになって、ふと、海が見たくなった。久しぶりに潮の香りを感じたいと思い、私は海辺を目指すことにした。
到着したのは、田舎の小さなリゾート地。整えられた砂浜にはヤシの木が並び、遠くにはいくつかのホテルが立ち並んでいた。それでも私は、ホテルの明かりを横目に、いつものように自分のハイエースで夜を迎える。貨物登録の「1ナンバー」だが、中はもうほとんどキャンピングカー。ベッドも棚も照明も、すべて自分の手で作った。ちょっと不格好だけど、愛着の詰まった小さな家だ。
夕暮れ、ワンちゃんを車から降ろして、海辺を少しだけ散歩した。波打ち際を歩く足元に、ひんやりとした潮風がまとわりつく。老犬の足取りはゆっくりだが、時折立ち止まっては海を見つめるその背中に、静かな誇りのようなものを感じた。「いい風だな」そう声をかけると、彼は一度だけこちらを見上げ、尻尾をふわりと振った。
夜は、近くの温泉で温まってから車へ戻る。月明かりを窓越しに眺めながら箸を動かした。東の空に面した海岸だから、夜は月が、朝は太陽が正面から昇ってくる。昨日は月が、波の上で静かに光っていた。犬は私の足元で丸くなり、穏やかな寝息を立てている。
潮騒と虫の声と、少し軋む車の音。それだけが夜のBGMだった。けれど、その静けさの中にこそ、旅の贅沢がある。
ホテルに泊まらなくてもいい。誰かに気を使うことも、時間を気にすることもない。ただ、愛犬と、手作りの車と、風と月と。それだけで、もう充分だった
明日の朝は、海の向こうから昇る陽を、犬飼と一緒に見よう。波に映る光の帯を見つめながら、静かにコーヒーを淹れよう。そんなことを考えながら、私は小さな明かりを消した