ママエアロ｜旭の投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

🍰「こ〜ちゃんの遅れてきたハロウィンケーキ」
家に帰ってきて、二日目の午後。窓の外には、秋の陽ざしがやわらかく差し込んでいる。こ〜ちゃんは、エプロンの紐を結びながら、心の中で小さくつぶやいた。
「よし、今日はケーキを焼こう。」
昨日は慌ただしく、間に合わせで“かぼちゃのハロウィン風コロッケ”を作ったけれど、今日は少し時間がある。久しぶりに、ゆっくりケーキを焼いてみようと思ったのだ。
スポンジケーキを焼くのも、もう今年で四度目。泡立てる手つきも、電気圧力鍋の温度加減も、だいぶ慣れてきた。今日はちょっとだけアレンジして、ココアパウダーを混ぜる。焼き上がった生地は、ほんのりビターで、どこかハロウィンの夜を思わせるような深いチョコ色。
「ハロウィンは過ぎちゃったけど、今年はできなかったからね。　ちょっと遅れてでも、楽しんでもらおうか。」
孫たちが幼稚園でのハロウィンの話を楽しそうにしてくれたことを思い出しながら、こ〜ちゃんは静かに笑った。
スポンジを上下二段に切り分けて、今日は二つのケーキを作る。一つ目は、ホワイトチョコとミルクチョコを湯煎して細く絞り出し、蜘蛛の糸のようにケーキの上に張りめぐらせた。そこに、黒いクッキーで作った“お化けクッキー”をのせる。目玉はホワイトチョコとチョコペンで、ちょっとギョロっとした感じに仕上げた。糸に引っかかったように見えるお化けが、どこか愛嬌たっぷりで、思わず笑ってしまう。
もう一つのケーキは、ふんわり焼けたスポンジの上にマシュマロを並べた。チョコペンで描いたのは、笑っているお化け、困っているお化け、ちょっと怒っているお化け—— いろんな表情が並ぶ。焼きたてのスポンジの温かさで、マシュマロの底が少しとろけ、まるでお化けたちが“ゆらゆら”と浮かんでいるように見えた。
夕方。幼稚園から帰ってきた孫たちが、ケーキを見た瞬間、「わぁ〜！おばけケーキだ！」と目を輝かせた。
チョコの糸を指でそっとつまんで笑う子、マシュマロのお化けを選んで「これ、怒ってる〜！」と笑う子。その笑い声を聞きながら、こ〜ちゃんは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
——たとえ少し遅れても、こうして家族と笑顔で囲む時間がいちばんのごちそうだ。
テーブルの上には、甘いチョコの香りと、遅れてやってきたハロウィンの余韻が、静かに漂っていた。