人は人の所有物じゃない。人は1人として立っていて、いくら親しくても1人の人生の全てを安易に知った気にもなれない。どれだけ好きでもその人の痛覚や快楽や見えない部分は読み取れない。1人で立つことが怖い。視覚的に認識出来る通りすがりの人々にも何かを感じて生きていく同じ人間のように見えなくて皆映し出されたプロジェクターにしか見えなくなったりして思わず身体を触ったその感触で確かめたりする。でもそれが許されるのは全くの赤の他人ではなくて親しい友人か恋人か家族しか許されない行為でもある。突き動かされた人、生活がままならない人の生活空間、そういう生っぽくて生理的な部分に触れたい。わたしもその一員となって1人ではないことに安心したい。私にも身体があって、感じる力がある血の通った人間だと言うことをわかって欲しい。触りたい、触って欲しい。1人として立つ人間としての境界線を出来るだけぼやかしてここにひとつの共同体として立ちたい。私の欲は、誰かとの混合への希望。1人でいる事への恐怖。でも一緒に立つ人もいないから私は自分の尻を叩いて1人で立たなければいけない。1人溶ける。
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