コミュしょー拗らせてるせいで話しかけれんなぁ…久しぶりに会うのに…こないだの事入れたら最近だけど…

ツルンとポロンと、飴玉と老犬のはなし

　いつものように、愛犬の散歩に出かけた。
　この役目は、こ〜ちゃんの担当。
　――と言っても、これは「義務」なんかじゃない。
　16歳になるこの子と、こうして並んで歩く時間は、何よりも大切で、ささやかな楽しみのひとつだ。

　この子は、もともと歩みがゆっくりな方だ。
　歳を重ねれば、足取りに少し時間がかかるのも、まぁ当然。
　けれど、今朝の足取りには、どこか違和感があった。

　（ん？　なんだか変だな……）

　じっと観察すると、左の前足を少しかばうように、ひょこひょこ歩いている。
　――ビッコを引いているようにも見える。

　心配が胸をよぎる。
　老犬だから、関節痛でも出てきたのだろうか。
　いや、もしかしたら……足の裏にトゲでも刺さっていたら可哀想だ。

　その日は散歩を短めに切り上げ、戻って足の裏をチェックしてみた。

　（あれ？　なんだこれ……？）

　肉球の間に、何かが付いている。
　パッと見た感じでは、肉球が割れてしまったようにも見えた。

　おそるおそる、濡らした布でふいてみる。
　すると、ぷにゅっ……とした感触が指先に伝わった。

　（んん？　これは……？）

　さらに布をぬるま湯で湿らせて、やさしく、やさしく拭きつづける。
　すると、ツルン……とした何かが、じわじわと姿を現してきた。

　正体は、まさかの――飴玉だった。

　どうやら、どこかで踏んづけてしまったのか。
　飴玉は少し溶けて、肉球の間の毛にべっとりとくっつき、まるで粘着テープのように張りついていたのだ。

　（そりゃ、歩きにくいわけだ…！）

　それからもしばらく、ぬるま湯を含ませた布で、ふきふき、ぬくぬく。
　ようやく飴玉は「ポロン……」と、音がしそうなほど見事に取れた。

　肉球は無事だった。傷もない。
　こ〜ちゃんは、胸をなでおろした。

　そして次の朝。
　愛犬は、いつものように「おさんぽ♪」とばかりにシッポをふりふり、外へ。

　今度の足取りは軽やかそのもの。
　すたすた、ぺたぺた、風にのって歩くように、気持ちよさそうに進んでいく。

　（よかった。ほんとうに、よかった……）

　そんな何でもない一日が、こ〜ちゃんにとっては――
　心の奥にじんわり沁みる、大切な奇跡のような朝だった。