高い炊飯器の力を味わいに象印食堂にいきたさがある。高い炊飯器の力がわからないから……

「す」の入ったプリン

こ〜ちゃんは、孫の話になるとつい顔がほころぶ。そんなこ〜ちゃんが、ある日キッチンに立ち、何やら真剣な表情で取り組んでいた

「よし、今日はあの子のためにプリンを作るぞ」
孫は4歳。プリンが大好きで、いつも「ママが買ってくれたプリン、おいしい！」と嬉しそうに食べている。その姿を思い出すたび、こ〜ちゃんは心が温かくなるのだった

だが、この日は「買ったものではなく、手作りのものを食べさせてあげたい」と思い立った。娘もきっと喜ぶだろうと、静かな闘志を燃やしていた

レシピを確認しながら、卵を割り、「ぽたん、ぽたん」とボウルに落とす。牛乳をそっと温めながら、「ぷくぷく」と泡立たないよう細心の注意を払う。慎重に混ぜ合わせたプリン液を器に流し込み、蒸し器にセットした。
「上手くできるかな？」と、蒸し器の蓋を開けたり閉めたり、蒸気の具合を何度もチェックする

しかし、ふたを開けた瞬間に見えたものは、思わずこ〜ちゃんの眉を寄せた。
「ん？これは……“す”だな」
蒸したプリンの表面に、細かい気泡が無数に入っていたのだ。失敗のサインだと知り、思わず「はぁ……」とため息が漏れる。

それでも気を取り直し、冷蔵庫で冷やしてみることにした。数時間後、食卓に並んだのは、見た目こそ完璧ではないものの、こ〜ちゃんの愛情がたっぷり詰まったプリンでした

「どうかな……」
緊張しながら一口すくい、孫の前に差し出す。孫はスプーンで「ぷるぷる」揺れるプリンを見つめると、大きな口を開けて食べた。そして――

「わぁ、おいしい！」

孫の笑顔が広がった瞬間、こ〜ちゃんの心の中で何かが「ぽかぽか」と温かくなった。
「ママのプリンと違うけど、これも好き！」という言葉に、こ〜ちゃんは照れ隠しに「そっか、それならよかった」と小さく笑う
その夜、娘が台所で片付けをしながら、「こ〜ちゃん、今日はありがとうございました。あの子、すごく嬉しそうでしたよ」と言ってくれた
「まぁ、たまにはな」と言いながら、こ〜ちゃんはそっと冷蔵庫を覗いた。そこには、自分用に作った「す」がいっぱい入ったプリンがまだひとつ残っていた
「これも意外と悪くないな」と独り言をつぶやきながら、こ〜ちゃんは自分のプリンを味わい、「ふふ」と静かに笑ったのだったね
それは、少し失敗しても、気持ちさえ込めれば誰かを笑顔にできるんですね😁