小説『100日で本を1,000冊売り切る話』14｜フラウビの投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

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フラウビ

2025/05/04

小説『100日で本を1,000冊売り切る話』14
勤める会社は一等地にある。もちろん社食もあるのだが、ほとんど外食していた。このあたりのサラリーマンの昼食価格は平均千二百五十円だそうだ。僕はそこを菓子パンかおにぎりに切り替えた。それもコンビニじゃない。前の日にもっと安い店で買ってくる。飲み物は家で麦茶を入れて水筒で持っていく。それとバナナかゆで卵を持っていくようにした。これで一日平均三百円にがくんと落ちる。
それで同僚たちからの昼の誘いを断るようになる。そのうち誰も誘ってこなくなった。「お前さ、社内で女の子たちになんて言われてるか知ってっか？知らねえだろ？」
ある日、昼過ぎに会社に戻ってきた同僚の藤井が、僕のとなりに座って言った。
「え、悪口？やだな」僕は食べ終えたおにぎりなんかのごみをまとめながら答えた。
　藤井は笑うと、
「たまご王子だってよ」
毎日お昼にゆで卵を剥いて、それをじいっと眺めている。それがおかしいんだそうだ。なぜじいっと眺めてるかというと、ちゃんと剥けているかチェックしているわけだが。カラが残っていたら、口の中でじゃりっというのが、どうしても嫌だから。
「それはバナナ王子でもよかったんだな」僕は苦笑いしながら言った。
　それから、晩飯も変わった。もちろん外食はしないが、メニューはほぼ一緒だ。ラーメンか、うどんの二択だ。うどんに油揚げかもやしか、あおさか、たまにスーパーで特売に出くわすと天ぷらなんかのバリエーションがある。何カ月続けても飽きは来なかった。
よく飲み歩いていた頃は、ほとんど家で晩飯を食べなかった。接待も多かったから、いいものばかり食べていたと思う。家でも、妻の晩御飯は、少し子ども好みだったけれど、楽しみだった。それが、どうしたことか、シンプルにしてみると、それはそれで楽しみだし、全く変化がないことに、なんの欲も浮かばない。