最近お気に入りの小説家をあえて1人教えて！?道尾秀介さん

施設に入っている認知症の母がいる

母が誰も会いにこないと寂しがっているから会いに行ってやれと父に言われて久しぶりに会いに行った

母は他の施設の入所者の方々と食堂で雑誌をめくりお茶を飲んでいた

私の顔を見るなり、名前を呼んでニコニコする母

「久しぶり、あんまり会いに来れなくてごめん」

「パズルの本が欲しい」と電話をかけてきたので、少し前にその本と鉛筆や消しゴム、筆箱、鉛筆削り、それらを入れる袋を買って持って行っていたので、進み具合を聞く。

「あぁ、あれはもう、とっくにやってないよ」
「じゃあ、持って帰るね、私がパズルするわ」
「もういらないから持って帰れ持って帰れ」

部屋に行きパズルの本を入れて渡した袋を見ると父にも同じことを言っていたらしくパズルの本が二冊入っていた

パラパラとページをめくると、難しかったのか一、二個解きかけのページがあっただけだった

それらを手に取り二、三言葉を交わし、特に何も言うことがなくなったので、ふと母が見ていた雑誌に目を落とす

そこには上品なスーツに身を包んだ豪族の方々が写っていた

「素敵な色のスーツだね」

「〇〇ちゃん（私）、そんなこと言わないの、あなたにこんな細い服が着れるわけないじゃないの」

たしかに私は太っているが、誰がこの服を着たいと言った？

続けて母が「入口からどこのおばさんが入ってきたのかと思ったら〇〇ちゃんだった」

老けたばばあで悪かったな！

母は人前だと私のことをくそみそにけなす

ずーっと昔の子供の頃からそう

なんでいつもそんなことを言うのか分からないが、長年「人前でけなされること」に耐えられなくなって、腹が立って腹が立って雑誌を乱暴に閉じて「帰る、二度とくるもんか」ムカついて帰った

誰も他人がいないときに会うと、そんな人を馬鹿にしたようなことは言わない

なんか母の母か父にそんなふうに人前でけなされて育ってきたのかなぁと思った

#認知症の母