僕は蛾の子供だから、さだはるくんが画用紙に描いた色鮮やかな蝶々にはならない。だから、蛹になった僕を毎日眺めて、羽化を待っている彼を見ると胸が痛んだ。そして、ある日の夜。彼が眠ってしまった頃、僕は殻を破る。そしてその煤竹色の羽を広げた。ごめんね、という気持ちでいっぱいだった。