ヘルメット着用の重要性｜GRAVITY(グラビティ) SNS

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2023/04/27

「ヘルメットを被って行ったほうがいいよ。途中で脱がないでね。」

彼には予知能力がある。
と言っても当たる確率は５割程度で、更に予知した内容を人に言うと二度と能力が使えなくなってしまうらしい。
なんとも中途半端な能力だ。

徒歩通勤にヘルメットというのはどうも恥ずかしいが、「ヘルメットを被れ」ということは、なにかしら頭を強打するイベントが起こるはずだ。
私は渋々彼の予言に従う事にした。

周りの視線に耐えながら歩いていると、いつもの曲がり角で、ゴミ収集用の青いネットからゴミ袋が引きずり出されているのを発見した。
袋は破かれ、生ゴミが散乱している。

しまった、今日は燃えるゴミの日か。
自分の家のゴミを出すのをすっかり忘れていた。
どうせならこういうのを教えてくれればいいのに。彼にゴミ出しのラインをしなければ。

そう思った瞬間。
バシッ！と、ヘルメットにはたかれたような衝撃が走った。

何が起こったか分からずヘルメットを外して見てみると、そこには特大の「カラスのフン」がこびりついていた。

このゴミ散乱事件の犯人が、現場に落とし物をしたらしい。罪に罪を重ねやがって。

私は頭上の犯罪者を睨みつけながら、会社への歩みを再開した。

その時の様子を、スローでご覧いただきたい。

足元には散乱した生ゴミが、具体的にはバナナの皮が落ちている。
私はそれに気付かない。

彼に外すなと言われたヘルメットは、しっかりと両手で持ってしまっている。

ここまで綿密に計画された事件があるだろうか。

私は筋書きどおりに足を滑らせ、後頭部を地面に強打した。

周りには生ゴミと、フンのついた汚いヘルメットが落ちている。

私は３つの罪を重ねた犯人から、２度目の落とし物が落ちてこないよう、神に祈った。

#Gravity小説部