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🐩皇藍猫🐩
―断たれた縁を、もう一度人へ還す―
第十一部「還縁」編は、断縁の器として崩れかけていたノゾムが、“器”ではなく“人間”へ戻るための道を踏み出した章だった。
第十部で縁を編み直す可能性が示されたことで、高専は次の段階へ進む。
断縁を止めることは、敵を倒すことでは終わらない。壊れた縁を結び直し、奪われた人間性を取り戻さなければならない。
舞台は医務室。
硝子がノゾムの身体を診た結果、突きつけられたのは静かな現実だった。ノゾムには呪術師としての力も術式もない。ただの一般人だ。それなのに断縁の核に取り込まれ、器として完成しかけていた。
それは呪いの異常ではなく、“人間がここまで追い詰められた”異常だった。
藍猫は硝子に問いかける。
「硝子さん、彼には能力はないの?まったくの人間?」
硝子は淡々と頷き、だからこそ危ういのだと告げる。
縁を救いと呼ぶことは簡単だ。
だが現実はもっと重い。
そこへ秤が現れる。
秤は縁だの救いだのを胡散臭いと切り捨て、藍猫に刺々しく絡む。口は悪い。態度も荒い。けれどそれは拒絶ではなく、“理解できないものを放っておけない不器用さ”だった。
藍猫は秤の言葉に真正面から言い返す。
虎杖たちは(マジか…言い返してる)と目を丸くし、釘崎も呆れ、伏黒はため息をつく。
悟は藍猫を「藍」と呼びながら肩を揺らして笑い、傑は穏やかに「藍猫ちゃん」と宥める。
七海は淡々と「言い合いをしている場合ではありませんよ」と釘を刺し、乙骨も「言うねぇ…」と苦笑する。
張り詰めた空気の中に、確かに“縁の温度”があった。
やがて乙骨を中心に、解除の儀式が準備される。
それは戦闘ではない。器を壊すためではなく、ノゾムを人間へ還すための儀式だった。
ノゾムは結界の中心に立つ。
器として引き戻そうとする黒い核はまだ奥に残り、恐怖と痛みが身体を縛る。
それでも藍猫は奪わないまま縁だけを繋ぐ。
七海が淡々と告げる。
「藍猫さん、繋いでください」
藍猫の縁が結界を満たし、ノゾムは苦しみながらも初めて口にする。
「……戻りたい」
その意思が結界を強く反応させ、黒い核にひびが入った。
完全な終わりではない。だが確かに、“最初の解除”だった。
儀式の後、ノゾムは初めて笑った。
器ではなく、人間の温度を持った笑いだった。
そしてノゾムは震える声で謝る。
縁が欲しかったのに怖かった。だから壊した。だから憎んだ。
藍猫は許すとも裁くとも言わず、ただ静かに頷いた。
「戻るって、そういうこと」
さらに朔の視点が差し込まれる。
朔もまた縁を結ぶことを恐れていた。藍猫が近づくと半歩距離を取ってしまう。守りたいのに、結ぶことが怖い。その揺れが縁の原点を浮かび上がらせる。
そして藍猫はノゾムに問いかける。
「ねぇ?ノゾム。呪術師は嫌い?」
ノゾムは答える。
嫌いだった。でも今は分からない、と。
その会話を扉の外で聞いていた秤が低く呟く。
「一般人がここまで来るとか、笑えねぇな」
藍猫は即座に噛みつき、秤も言い返す。
言い合いになるのに、その空気はどこか温かい。悟と傑はクスクス笑い、七海は呆れ、乙骨は苦笑する。
けれどノゾムにはそれが初めて“縁の中の会話”に見えた。
ノゾムはまだ途中にいる。
核は残り、器の影は消えていない。
それでも彼は初めて、自分の意思で“戻る”ための一歩を踏み出した。
還縁とは、失われた縁をただ取り戻すことではない。
壊れた縁を結び直し、人間としてもう一度選び直すこと。
第十一部「還縁」編は、ノゾムが“器ではなく人間へ還る”物語の始まりだった。
第十二部:再縁(さいえん)編へ突入!
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