歳を重ねるほど、他人の幸せに出会う場面は、なぜか増えていく。

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投稿

咲太郎

2025/12/29

歳を重ねるほど、他人の幸せに出会う場面は、なぜか増えていく。

テレビをつければ、家族団らんの映像。

誰かの成功談や、楽しそうな旅行の様子。

何気なく眺めているだけなのに、心がざわつくことがある。

自分の気持ちに余裕がある時は、違う。

仕事がうまくいっている時。

体調がいい時。

心が満たされている時。

そんな時は、他人の幸せをそのまま受け取れる。

「よかったね」と思えるし、どこかで自分まで温かい気持ちになる。

けれど、自分の調子が悪い時は、途端に景色が変わる。

同じ笑顔なのに、眩しすぎる。

同じ言葉なのに、耳障りになる。

気づけば、妬んだり、僻んだり、
心のどこかで見下げるような感情まで湧いてくる。

そして後から、自己嫌悪だ。

「ああ、嫌な人間だな」と、自分にがっかりする。

こんな自分でいたくないのに、と思う。

たぶん、同世代なら、一度や二度じゃないはずだ。

若い頃は、他人の幸せを見ても、
どこかで「自分もこれからだ」と思えた。

未来が長く、可能性が広がっていると信じられたからだ。

でも、ある年齢を過ぎると、
人生の残り時間を意識するようになる。

選ばなかった道、手に入らなかったもの。

もう戻れない時間。

そんな思いが積み重なった時、
他人の幸せは、時に自分の足りなさを突きつけてくる。

人を妬んだり、僻んだりするのは、きっと人間として自然な反応なんだと思う。

決して立派ではないけれど、正直な感情だ。

ただ、その感情に囚われ続けるのは、本当に疲れる。

たった一度きりの人生なのに、他人の幸せを見て、自分の心をすり減らしてしまうのは、あまりにももったいない。

だから最近、自分にこう言い聞かせている。「これは、幸せのお裾分けなんだ」と。

自分がうまくいっていない時ほど、世の中には、まだこんな笑顔があるんだと、そっと教えてもらっているのだと。

不思議なもので、そう思うだけで、胸の奥の硬さが、少しだけ緩む。心が楽になると、体も正直に応えてくれる。

もちろん、幸せそうに見える人の人生が、ずっと順風満帆なわけがない。

笑顔の裏には、誰にも見せなかった努力や、飲み込んできた悔しさや、越えてきた悲しみが、きっとある。

人生は、不公平で、理不尽で時々、残酷だ。

でも同時に、思いがけない優しさも、ちゃんと用意されている。

今日は、うまくいかなかった。

失敗もしたし、気分も沈んだ。

けれど、それは明日や明後日の幸せの前触れかもしれない。

そう思えるようになってから、
一日の終わりが、少しだけ穏やかになった。

他人の幸せは、その人の日々の積み重ねの結果であり、今、その人に順番が回ってきているだけ。

ならば、いつかは、自分にも回ってくる。

そう信じるくらいは、許されるはずだ。

そう思えた時、他人の幸せは、敵ではなくなる。

羨望でも、敗北でもなく、未来への希望として、静かに胸に残る。

とはいえ、現実は甘くない。腹が立つ日は、やっぱり腹が立つ。

幸せそうな映像を見て、テレビを消してしまいたくなる夜もある。

それでもいい。

未熟なままで、揺れながら、それでも「そうありたい」と願い続けること。

それ自体が、この歳になっても、
まだ人生と向き合っている証拠なのだと思う。

他人の幸せを、自分の幸せと思えるようになりたい。

今日もまた、その途中に立っている。