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《phenomenon》解説
希:φαινόμενον(パイノメノン)→拉:phænomenon(パエノメノン)→仏:phénomène(フェノメヌ)=英:古綴phænomenon(フェノメノン)⇨新綴 phenomenon=独:Phänomen(フェノメーン)→和:現象。
φαινόμενονは動詞 φαίνειν(パイネイン)「輝く(shine)」「見せる(show)」の受動分詞の中性形で、「見(あらわ)れる(appear)」「見られる」を意味している。同源のことばに、φαίνεσθαι(パイネスタイ)があって、これもまた「見れる」を意味している。語根√ φαν(ファン)は√ φα(ファ)で、これはサンスクリット語の भा(バー)にまでさかのぼる。すなわち「輝く」の意である。
①近代哲学(主にカント)に於ける意味:物自体(thing in itself)とは区別されたものとしての、見掛(appearance)もしくは経験(experience)の無媒介的対象(immediate object)。
ウィリアム・ハミルトン卿曰く:「見掛という名彙は、ただにわれわれの観察に対して現実存在(existent)としてみずから露呈するものであるのみではなくて、また、真に存在するものと対比して、ただそれと見えるのみであるものをも意味している。かくてこの語には単に一定の曖昧さがあるのみならず、「現象」が役される時に用いられる義に対して矛盾をすら孕んでいる。勢い「現象」の名彙は見掛の名彙の哲学上代替として、われわれの言語に於いて自然化されてきたのである」(『形而上学』、viii.)
[解説:上にハミルトン卿の云っている通り、近代哲学に於いては、「現象」は真に存在しているものとは違って、ただわれわれに取ってはそれと見えるだけのものを意味している。]
②科学における意味:直接観察された事実で、(a)個別の事態(たとえば一時的に見える星)か、もしくはより尋常の意味においては、(b)一定の契機に観察される統整的(regular)な事実のたぐい(たとえば寒い天気で人と人の毛髪の触れるさいに見られる電火)
[附記:《phenomenology, phaneroscopy》は別項に論ずる。]
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